火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第15章 下弦の壱、そよぐ勿忘草 ˖☽°.*
「いえ…っ、私は大丈夫です…っ。
今しのぶさんを呼んできます!!
蓮、すぐに戻るからね!!」
「待て!一ノ宮!!」
ふみのは義勇の指示を無視し、
しのぶの元へ駆けていく。
ふみのは自分の傷の痛みなど
何も感じていなかった。
早くしないと蓮が…、蓮が…っ!!
ふみのはしのぶのいる方向へ
全速力で走った。
「まさ か…義勇さんが、
来てくれ…るなんて、
思っても みな かっ…」
蓮の呼吸が大きく乱れる。
苦しそうに義勇を見る蓮の瞳からは
絶えず涙が溢れる。
苦しむ蓮の姿に
義勇は奥歯を噛みしめる。
蓮を抱く腕に、義勇は更に力を込める。
「…蓮、もう話すな」
義勇は、蓮の手を強く握りしめる。
蓮も震える手で、そっと握り返した。
「あたし…できたん です…っ、
義勇 さんに 見てもら った 型…っ。
義勇さん のこと…想ったら、
…自然に できたんです…っ。
…ふふ…義勇 さんに、
また 会え て 良かっ…っ」
蓮の口を
義勇の口唇が塞ぐ。
「───…っ」
二人の顔が離れ、
義勇の熱い眼差しが
蓮の瞳に降る。
「…もう、
何も、話すな…っ」
蓮は、幸せそうに
ゆっくりと微笑んだ。
「…義勇さん、
好き…っ、大 好き…っ。
来て くれて…ありが とう…っ」
「…っ!」
義勇は蓮を、優しくも
強く、抱きしめた。
腕の中で蓮の呼吸が
弱くなっていくのが分かった。
蓮が義勇の手を
最後の力を振り絞り、強く握る。
体を離して、蓮を見ると
その表情はとても穏やかだった。
「…ふみのに…、
伝えて ください…っ、
ふみのは 強い、
だから 大丈 夫って…。
一緒に いて くれて…、
あり がとう…、
ずっと 大 好きだよっ て…っ」
「…ああ、分かった。
一ノ宮ももうすぐ戻…っ」
義勇の手から、
蓮の手が滑り落ちた。
「…っ!!
…蓮!!…蓮!!!」
蓮の瞼がゆっくりと
閉じていく。
蓮の目尻から一粒の涙が
地面に落ちた。
蓮は義勇の腕の中で
安らかな眠りにつくように
静かに息を引き取った。