火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第15章 下弦の壱、そよぐ勿忘草 ˖☽°.*
ふみのは潜めるように呼吸を整える。
「光の呼吸 肆ノ型 煌陽の暁──」
ふみのは柄をきつく握り、
重たいままの日輪刀を、
死に物狂いで振り落とした。
刃紋に、夜が明ける前の
最後に残る星の瞬きのような艶めきが
その刃を包み込む。
ふみのは向かってくる針を
手足に掠めながらも、懦倥に迫る。
刀は一筋の光輝となり、
ふみのは、刃を奮う。
蓮を、早く救わなければ……っ
その一心で
ふみのは懦倥の頚を狙った。
ザンッ─────
懦倥の頚にその刃が食い込む。
刃を包み込んだ光は、
ふみの自身にも纏われ、
その光は刃を伝い、
懦倥の全身をも取り巻いていく。
まるで陽光に当たったかのように
懦倥の体全体を焼き尽くしていった。
「何故、何故だあ…っ!!!
俺の頚はまだ斬れていないのに…!!!
この光は何なんだ…っ!!
ああああ!!胸糞悪い!!
此処まで上り詰めたのに…!!
ああ…腐っていく…何もかも…っ」
懦倥は細かい灰になり、
その姿を消した。
空が薄らと明るい。
もうすぐ夜が
明けようとしていた。
ふみのは一目散に
蓮のもとに駆け寄る。
蓮の呼吸が浅くなり、
意識が朦朧としていた。
「蓮…っ今誰か呼んでくるから…っ」
蓮の手を握るが、
弱々しく握り返される。
「…っ、ふみの、
何…さっきの型…、
すっご い、綺麗 だった…っ」
「蓮、もう話しちゃ、駄目…っ」
「蓮!!!!!」
そこにふわりと
誰かが舞い降りた。
それは半分柄が異なる
羽織を身に纏った隊士、
水柱 冨岡義勇だった。
「…っ!!
義 勇さ…っ、びっ くり…。
どうし て…ここに…?」
義勇は蓮の横に腰を下ろし、
そのままそっと蓮を腕に抱きかかえた。
上空では、月光と寛三郎が
弧を描くように飛んでいた。
月光が、蓮達のことを義勇に知らせていたのだ。
「…一ノ宮か」
蓮に視線を向けたまま
義勇はふみのに声をかけた。
「…っはい…っ!
誰か…っ援護は来ていますか…?!」
「奥に胡蝶がいる。
…だが一ノ宮も怪我を負っている。
そこから動くな」