火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第15章 下弦の壱、そよぐ勿忘草 ˖☽°.*
「…何年振りだあ?この匂いを嗅ぐのは…。
そういえば、そんなこともあったなあ…!
…お前だよ、お前。
変に眩しくぎらぎらさせた技を使う鬼狩りよお!」
(私…!?
何の事を、言ってるの…っ??)
「お前…、あの時の
生き残りだなあ…!?」
「「 !!! 」」
ふみのは驚愕し、
思考が止まる。
「その面(つら)、いいぞいいぞぉ…!
やはりそうだよなアア!!
ああ、懐かしくて身悶える…!!
…俺が襲ったんだよ、
お前の一族をな…!!!!」
「「 ─────…っ!! 」」
刀を握っていたふみのの手が
がくがくと震え出す。
動悸が酷く打ちつけ、
どんどん呼吸が乱れていく。
自分の家族を襲ったという鬼が
目の前にいる。
衝撃的な事実に
これが現実なのかどうか、
それすらも分からなくなる。
「…あの屋敷にいた餓鬼を鬼にして、
見事に襲撃できたってわけよ…。
まあ大して使えない糞餓鬼だったがなあ。
途中で柱が来やがったが…、
まあ餓鬼が相手してくれたお陰で
俺は思う存分に人間を喰えた…っ。
…そうだあ、俺が襲った女…、
確か“みち”とか言ったなあ。
稀に見る濃い希血でよお、うんまかったなあ…。
俺に立ち向かってきやがったのが癪で
胸元から齧り付いてやった…。
ぐふふ、今でも忘れられねぇなあ、あの顔…っ」
ふみのは我を失う。
懦倥を、
家族の命を奪った鬼を、
恨むように、睨ねめつける。
キィ─────ン…
耳鳴りのような、
刃物同士が擦れ合う高音が辺りに響き渡る。
一瞬、心臓を掴まれたような痛みが
ふみのを襲ったが、気にも留めなかった。
「…絶対に、許さない…っ!!」
気が狂いそうなほど
激しい憎悪がふみのを襲う。
もう何の感覚も、感じない。
涙すらも流れなかった。
「お前らは希血じゃなさそうだがな…、
奴らと同じところに逝け!!
血鬼術!青玉針(セイギョクシン)!!」
目の前に懦倥から放たれた
大小様々な鋭い針が
ふみのと蓮に襲いかかる。
ドクン─────
再び日輪刀が唸る。
その瞬間、刀は重力に負けるように
地面に刃先がすとんと落ちた。
突然、刀が鉛のように重くなったのだ。