火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第15章 下弦の壱、そよぐ勿忘草 ˖☽°.*
目が眩むほどの光が放たれ、鬼が一瞬怯んだ。
その隙にふみのは蓮の肩を持ち、
その場から離れると、木の影に座らせた。
「ふみの…っ!!」
「ごめんね、来るのが遅くなって…っ」
「ううん…手こずってほんとごめん…」
「何言ってるの!!
ここは私が戦う。蓮は奥に逃げて。
今、応援をお願いし…」
「馬鹿!!!
ふみのが目の前で刀振るってるのに
自分だけ引き下がるっていうの?!
そんなんできるわけないでしょ…!?」
「蓮、駄目!!
こんなに怪我をしてるのよ?!」
「こんなの全っ然平気だから!!
てかあたし達、
何年一緒にやってきたと思ってんの?」
得意げに言う蓮に
ふみのは判断に迷った。
このまま蓮を戦わせて、
万が一のことがあったらと。
「ねえ、ふみの。
ふみのを一人になんか出来ない。
ふみのになんかあったら
あたしが耐えられないもん。
…だからお願い」
蓮の揺るがない瞳に、
ふみのは胸を打たれる。
「…分かった。
鬼には私が近づく。
蓮は援護をお願いできる?」
「了解!!」
蓮はいつものとびきりの笑顔を
ふみのに向けた。
立ち上がる蓮の腕を
ふみのは持ち上げ、
二人は鬼へと立ち向かう。
鬼の周辺は土埃が立ち、
そこから放たれる腐敗臭は強く漂っていた。
「…やってくれるなあ、鬼狩りサンよお…」
土埃が静まると、鬼は裂けた体の表面を、
じくじくと音を立てながら再生していた。
鬼は更に薄気味悪く
にたにたとふみの達を見た。
「この懦倥(ジュコウ)を
倒せるとでも…?
…何人いても、俺の頚は斬れないぞ…?」
「…そーゆーあんたも、
あたし達を見縊らない方が
いいと思うけど?」
ふみのと蓮は刀を懦倥に構えた。
すると、懦倥の目玉がぴたりと
何かを捉えたように動きを止めた。
「…ん?…はて…。
…こりゃあ随分と
懐かしい匂いがするじゃねぇか…!!」
「「…!??」」
懦倥が嬉しそうに
けたけたと笑い出す。
「何を、言ってるの…?!」
ふみのは懦倥の
不可解な笑みの理由が分からず
眉を顰め、たじろぐ。