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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第15章 下弦の壱、そよぐ勿忘草 ˖☽°.*



ふみのは杏寿郎のことを
心から愛しいと思う。

それは杏寿郎も同じで
愛しいふみのを熱く抱擁し
更に強まる欲情に歯止めが掛からなくなっていた。



その後の昼餉では、杏寿郎の好物を並べ
久々の団欒の時間を楽しんだ。

見慣れたこの風景に
三人は改めて、当たり前なことは
何一つないことを思い知る。

ふみのも箸を進める手をふと止め
杏寿郎と千寿郎を見た。

美味しそうに頬張りながら愉しそうにする二人を
もう数え切れないほど見ているのに
その光景は、ふみのに今までにない程に
眩く、愛おしく映っていた。

この煉獄家に来て、何年もの間、
自分が此処で暮らしているということ。

煉獄家が自分を救ってくれて
今を、生きていること。

あの夜、全てを失い、
もう自分には大切に想うものは
何も残っていないと
生きる意味がないとまで思った。

でも、現実を受け止め
困難に立ち向かいながらも
生きていくという素晴らしさ。

今度は、自分が何かを守りたいと
湧き上がった信念。

大切なひとを想い
愛するということを

少しずつ分かってきたように思う。





守るなんて
簡単なことじゃない

でも、この何にも変えられない
私の周りにいてくれる大切なひとの
笑顔と時間だけは

私が守ってみせる

これが私に出来ること

私の使命




今、生きていることに

感謝して




二人の愛らしいやりとりを見て
ふみのは笑みが溢れた。





その午後、ふみのと杏寿郎は
ふみのの自室で何をするわけでもなく
ただ、二人で穏やかに過ごした。

縁側で、ふみのの膝に
杏寿郎は頭を乗せ、寝転び、目を閉じている。

その寝顔をふみのは
愛おしそうに眺め、焔色の髪を撫でた。

二人を掠める心地よい風が、
心を和ませていく。

「…ふみの」

「ん?」

杏寿郎が目を開けると
その手がふみのの頬を撫でる。

「…いや、手が届く距離に
 ふみのがいるんだと、そう思ってな」

「ふふ、…うん。
 私はここにいるよ」

「…何度も言っているのに
 どうしても伝えてしまいたくなる」

「…?」

「ずっと…俺の傍にいてくれ、ふみの」

「うん…!ずっと一緒にいる…っ。
 このままずっと…!」

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