火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第15章 下弦の壱、そよぐ勿忘草 ˖☽°.*
ふみのは頬に添えられた杏寿郎の手を
そっと自分の掌で包んだ。
「…ふみのに
伝えたいことがある」
「…なに…?」
杏寿郎はゆっくりと起き上がり、
ふみのの瞳を捉えた。
その紅い瞳と睫毛が一段と艶めく。
「ふみの、愛している」
一瞬、時が止まったかのような錯覚に
ふみのは陥った。
杏寿郎の熱い瞳は
今、自分だけを見つめていて。
そう伝える杏寿郎の言葉は
自分に向けられていて。
もう私の心は
熱く溶けてしまいそうなほどに
杏寿郎に夢中になっている
心が、痛く締め付けられる程に
杏寿郎のことが、愛おしい
今、この瞬間(とき)を
杏寿郎と共に生きていることが
私にとっての、希望だ
杏寿郎は
私の
生きる希望だ─────
「杏寿郎、
私も杏寿郎のこと…愛してる…っ」
杏寿郎は、ふみのにそっと口付けた。
「俺は本当に、…幸せ者だな」
この上なくほころぶ杏寿郎に
ふみのの瞳から涙が溢れた。
「…そろそろ泣き虫は
卒業しなくちゃね」
照れ笑いするふみのの涙を
杏寿郎はそっと拭う。
「これは嬉しさのあまり、流した涙だろう?
ふみのの心が美しいからこそ、
流せる涙だ」
「ふふ、ありがとう、杏寿郎。
…私も何度も言ってしまうわ」
「?」
「杏寿郎、大好きよ」
「ああ。俺もふみのが、好きだ」
ふみのと杏寿郎は
一段と深い口付けを交わす。
杏寿郎はそのままふみのをゆっくり押し倒し、
二人は、甘いひとときに落ちていった。
心の奥底で繋がるように
ふみのと杏寿郎の愛の絆は、
深く結ばれた。
何があっても、この手を離すまいと
杏寿郎は、その愛のひとときの間、
ずっとふみのの手を握っていた。
そして何度もお互いの名を呼び合った。
目の前にいるのは、紛れもなく、
心から求めていた愛するひとがいるのだと、
確かめ合うように。
お互いの熱が溶け、
甘さは香りと色だけを残していく。
想いも、体も、一つになる歓びに
二人は浸っていく。
しかし鬼は容赦無く、
ふみの達に襲いかかる。
そしてその夜、
身を潜めていた鬼達が、動き出す─────