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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第15章 下弦の壱、そよぐ勿忘草 ˖☽°.*



二人は軽く身なりを整え、
向かい合わせに寝転んだまま、
事後の余韻にしばし浸る。
杏寿郎は、優しくふみのの髪を
撫でてくれていた。

いつも以上に、お互いの存在が近くに感じる。
心身共に通じ合った幸せを、
ふみのと杏寿郎は噛み締めた。

杏寿郎は、少し眠たそうにしていた。
それもその筈だ。連日立て続けの任務で
休むこともままならなかっただろう。

「杏寿郎、少し休んで…?
 朝食の用意をしてくるね」

「ふみの…動いて大丈夫か?」

下腹部に少々違和感が残っていたものの、
痛みは殆どなかった。

「うん、大丈夫よ。
 湯浴みの用意もしてくるわ。
 台所にいるから、起きたら声をかけてね」

「ああ、すまない…」

杏寿郎の髪をそっと撫でると、
安心したように杏寿郎は眠りについてしまった。

外では常に気を張り、柱として皆を守り、
鬼を滅し、どんなに苦しい状況でも
その辛さを周りに見せることはないだろう。

少しでも、自分の存在が
杏寿郎の安らぎとなって欲しい。

杏寿郎の穏やかな寝息に
ふみのの心は癒されていく。

ふみのは手際良く着物を着ると
杏寿郎にそっと布団をかけ
部屋を後にした。




ふみのは湯浴みの支度をした後、
洗濯物を干しに、庭に出た。

照りつける太陽の光はいつもと変わらない筈なのに
杏寿郎が戻ってきたということだけで
こんなにも、世界は輝いて見える。

台所で朝餉の用意をしていると
千寿郎がまだ眠たそうに
瞼を擦りながらやってきた。

「ふみのお姉様、おはようございます。
 すみません、少し寝過ぎてしまいました…」

「千寿郎くん、おはよう。
 もっと休んでいてもいいのよ?」

「…!ふみのお姉様…!」

「ん?なあに?」

「兄上が戻られたのですね…!?
 良かった…良かったです…っ!」

「! うん、そうなの!
 杏寿郎に会ったのね!」

「いえ!まだ兄上には会ってないのですが、
 …ふみのお姉様の
 お顔を見て分かりました。
 兄上が帰ってきたんだなって」

「…!?私の顔…っ!?」

「はい!とても嬉しそうにされていたので
 きっとそうだろうなって!」

「千寿郎くんは、何でもお見通しね…っ!」

恥しそうに頬を赤るふみのを
千寿郎は嬉しそうに見ていた。

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