火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第3章 生き残った一人の少女
真っ暗な暗闇を
ふみのはひとりで歩いていた。
(…ここはどこ?
…ああ、私は鬼に殺されて死んでしまったんだ。
とうさまやかあさま、よしのと健一郎もどこかにいるのかな)
周りはただ暗く、見渡しても誰一人おらず、
ふみのは心細くなった。
『ふみの。ふみの』
懐かしい声が聞こえた。
みちの声だった。
「…かあさま?かあさまなの?どこにいるの?」
声は聞こえるのに、みちの姿は見えなかった。
『ふみの、ごめんなさい。
あなたを置いて、ひとりにしてしまったことを…。
…どうか許してください。
ずっと、ずっと側にいると約束したのに、
それを守ることができず、私は、母として失格です』
「…え…?かあさま、わたしもあの世にいるんでしょう?
だから、ずっと一緒よ」
みちが何を言っているのか分からず、
ふみのは戸惑った。
『ふみの、…あなたは生きています。
これから、生きていく上で、楽しいこともたくさんあります。
…時には苦しいことも。
でも忘れないで、欲しいの。
いつでも、とおさま、かあさま、よしのも健一郎も
ふみのの側にいることを。
姿は見えなくても、ずっとそばにいます。
世界一可愛い、私のふみの。
…本当に、ごめんなさい…大好きよっ…』
みちのその声を最後に、ふみのの意識は途切れた。
重たい瞼をゆっくりと開くと、
そこには見慣れない天井があった。
(……ここはどこ……?)
鳥のさえずりが、ちゅんちゅんと聴こえた。
ふみのは小さな縁側がある
程よい広さの和室に寝かされていた。
熱は下がっているように感じるが、
体の節々が痛い。頭皮にも弱い痛みが走る。
所々に包帯が巻き付けてあり、
起き上がることはまだできそうになかった。
(…私は生きているの…?)
状況がうまく理解できず、
頭はぼぅっとする。
すると、誰かが部屋に向かって
歩いてくる足音が聞こえてきた。
とんとんと襖を叩く音が聞こえる。
ゆっくりとその襖の方を見ると、
一人の女性が顔を見せた。
「…!!
よかった…っ。目が覚めてよかった…!」
その女性は紅の美しい目を
まんまるにさせてふみのに近づいた。