火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第15章 下弦の壱、そよぐ勿忘草 ˖☽°.*
得意げに笑う蓮に
義勇もそっと口角が上がる。
「…相変わらず、よく話すな」
「へへっ、すみませんっ」
こんなにも近くにいるのに
義勇さんに、あたしの気持ちは届かない
想いって
言葉にして、初めて、伝わるんだ
…当たり前だけど
「義勇さん、さっき、初めて、
あたしの名前…呼んでくれましたよね?」
「…それが、どうした」
「いえ、…初めて呼ばれたなって…。
す、すみません、それだけです…」
義勇さんの目に
あたしはどう映っているのかな…
まあ、あたしのことなんて
きっと大勢の隊士の中の一人ぐらいに
思ってるんだろうけど
「そうしたかった」
「…え…?」
「…蓮の名前を、呼んでみたかった。
ただ、それだけだ」
「……っ」
蓮は義勇の横顔に釘付けになる。
それって…、
義勇さん…あたし…っ
勘違いしちゃうよ…っ
「義勇さん!!
義勇さん…っ、あたし…っ、
あたしも義勇さんの名前、
もっと呼びたいです…っ!
嬉しいことでも楽しいことでも
例え下らないことでも、
どんなことでもいいんです…。
義勇さんと色んなこと、
話していきたいんです…っ!!」
「…!」
蓮は身を乗り出すように
義勇に話していた。
義勇も、蓮が必死に何かを
伝えようとしてくれている言葉に
目を見開いて聞き入っていた。
蓮ははっと、義勇との距離が
近くなっていることに気付く。
「す、すみません!!」
あ〜〜〜っ
あたしってば
またこんなことして〜〜っっ
…後先何も考えないこの性格、
本っ当どうにかしたい…
蓮は、はあと溜息をつき、うなだれる。
更に増す気まずさに
羞恥心が蓮に押し寄せる。
「…何を食べた」
「え…?」
「…昨夜は、
何を食べたのかと聞いた」
…え、もしかして、義勇さん…
何かあたしと話そうと
してくれているの…?
もし
もしそうだとしたら
…ものすごく、嬉しい…っ!
蓮は泣きそうになるような
込み上げる気持ちを抑えながら、
にこりと笑って義勇に話しかけた。
「鮭の甘酢あんかけを食べましたっ!」
「…本当に好きだな」