火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第15章 下弦の壱、そよぐ勿忘草 ˖☽°.*
蓮は大きく息を吸う。
あたしの型は
この想う気持ちから
生まれてくるような、気がする
水面に波紋のように広がる
高まる気持ち
誰かを想う気持ち
例え、儚くてもいい
想うこの気持ちを水の呼吸に乗せて…っ
「全集中 水の呼吸 拾弐ノ型
花蔟 落花流水(はなむれ らっかりゅうすい)!!」
蓮が大きく刀を振ると、
勢いよく水飛沫が渦を巻き、
それを囲むように桜色の蓮(はす)の花弁が
高く天に舞い上がる。
舞い上がった花弁は、
滝の如く地面に落ち、渦を巻いた水飛沫が引くと
的にしていた竹は、木っ端微塵になっていた。
蓮は肩を大きく揺らし
呼吸を整える。
今のって…あたしだけの型…っ??
言葉が自然に、出てきた…っ
何が起こったのか、
蓮はよく分からなかった。
「良くやったな」
蓮が振り返ると
真後ろに義勇がいた。
「これは蓮だけの、型だ。
きっと、蓮の支えになる」
「は、はい!
あ、ありがとうございます…っ」
「…休むか」
「え、でもまだ一度しか
出来てないですし…」
「もう今日は十分だろう」
「…じゃあ、休憩、します…」
義勇は蓮に冷やを出してくれた。
二人は縁側に腰掛ける。
「「・・・」」
稽古でなくなると
どうしても最初の一言が
上手く話せない。
大抵、最初に話しかけるのは
蓮からだった。しかし。
「どう振った」
「…!?」
今日は義勇から
蓮に話しかけてきたのだ。
「…さっきの、型ですか?」
「そうだ」
「…え、えと」
…まさか、義勇さんのことを
想っていたなんて
絶対に言えない…っ
「と、届かない、想いを、その、」
「…?
どういうことだ」
「こう、あるじゃないですか、
…どんなに思っても届かない、
気持ちみたいなの」
「あるのか」
「…あるんですっ!」
「いや、蓮には、
それが、あるのか」
蓮はその言葉にはっとする。
思わず、隣にいる義勇を見つめた。
「……義勇さんは、ありますか、
そういう、こと…」
「…俺の質問は無視か」
「え、あるんですかっ!?」
「・・・ない」
「え、嘘です、ありますよね!?
その顔はありますよ!」
「ないと言ったらない」
「あたし、大分義勇さんの表情、
掴んできてますからっ!」