火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第15章 下弦の壱、そよぐ勿忘草 ˖☽°.*
「…え、えと、実は、その…っ」
ふみのはいざ蓮に話そうとするも
緊張してしまい、どんどん顔が熱くなる。
「…!!?? 嘘、もしかして…っ、
杏寿郎くんと恋仲になったのっ!?」
蓮は身を乗り出して、
ふみのに近寄った。
蓮には一番最初に
杏寿郎とのことを伝えたかったが、
初めてのことで、ふみのは戸惑ってしまっていた。
「う、うん、少し前に…っ。
でも、こういうのって、
どう伝えていいか分からなくて…、
蓮にも話しそびれちゃってごめんね…」
蓮は呆然とふみのを見つめていると、
目尻から一滴の涙が零れ落ちた。
「! 蓮、どうしたの…っ!?」
ふみのは蓮の涙を、その時初めて見た。
その瞳から、ほろほろと涙が頬を伝う。
蓮は決めていたのだ、
ふみのの前では決して涙は見せないと。
常に笑っていようと。
ふみのは普段見せない蓮の姿に動揺し、
驚いてしまった。
「…だって、大っ好きな親友が
好きな人と恋実らせたんだよ?
こんな嬉しいこと、なっかなかないよ。
嬉しくて泣くなんて、いつぶりだろ…っ」
はー涙止まんない!と
蓮はごしごしと袖口で涙を拭いていた。
ふみのはふと、自分の視界が
滲んでいることに気付く。
「…って、ちょっとっ!
なんでふみのが泣いてるわけ〜?」
「だ、だって、蓮が、
あまりにも優し、くて…っ」
困惑しつつも笑う蓮は、自分の着物の袖で
ふみのの涙を拭いてくれた。
「…ふみのの幸せは
あたしの幸せなんだよ。
絶対に、幸せになって欲しいからさ」
ふみのは蓮の笑顔に
益々涙が止まらない。
「も〜ふみの泣きすぎっ!」
「う〜…、
泣き虫なのは知ってるでしょ…っ?」
ハイハイと言いながら
蓮はふみのの涙をそっと拭く。
「ふみのには、いつも笑ってて欲しいの。
…ふみのはあたしにとって、
本当に大切なひと。
お兄ちゃんも、父さん母さんも、
師匠もゐとさんも、
…義勇さんのことも、好き。
でもね、ふみののことが
一番好きだよ、あたしは」
「…!」
照れくさそうに
でも嬉しそうにする蓮に
ふみのの気持ちは
じんわりとあたたまっていく。