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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第14章 炎柱、そして迫る影




杏寿郎は、ふみのの方へ
体の向きを変えた。

杏寿郎のいつもの紅い瞳は
潤んでいるようにも見える。

「…今日、本部に呼ばれ、
 お館様より、炎柱へ任命された」

「…!!!
 本当に…っ!?
 杏寿郎、本当におめでとうっ!!
 良かった…っ、本当に良かったわ…っ!」

ふみのの目が涙で滲む。

しかし、杏寿郎はただじっと
俯いていた。

「だが…」

「…?」

「…父上は、喜んでくれなかった」

「…っ」

物悲しそうに笑みを落とす杏寿郎に
ふみのはぎゅっと胸を締め付けられる。

「俺が柱になれば、
 以前のような父上に
 戻ってくれるのではないかと
 思っていたんだ…」

杏寿郎の膝の上に置かれた拳に力が入る。

「…しかし、どうすることも出来ないことは
 考えても仕方がないな!
 俺はこれからも、俺の責務を全うし
 鬼殺隊を支え、鬼を滅する。
 …ふみの、いつも隣で支えてくれて
 心から感謝をしている。
 いつもありがとう」

にっこりと笑う杏寿郎ではあったが、
その笑顔はどこか淋しくも、
無理をしているようだった。

「杏寿郎、…私はどんな時も
 杏寿郎の一番の味方よ。
 そして杏寿郎に、今もずっと憧れていて。
 優しくて、強くて…
 いつもお日様みたいな
 杏寿郎の笑顔が私の元気の源なの。

 杏寿郎が辛い時は、何でも言って欲しい。
 杏寿郎は、私に言ってくれたでしょ?
 …泣きたい時は、
 いつでも、泣いていいって…」

杏寿郎の頬に
ふみのは手を添えて微笑む。

杏寿郎はその笑顔に
目頭が熱くなる。

「ありがとう、ふみの。
 もうその言葉だけで、…俺は充分だ」

ふみのの手の上から
杏寿郎は自分の手を重ねる。

杏寿郎は静かに目を閉じ、
ふみののその細い手を握りしめた。

手のひらの温もりが、
二人の心を溶かしていく。



「ふみの」



杏寿郎の紅い瞳が
ふみのを捕らえる。

その眼光は、
しかとふみのを見ていた。

「杏、寿郎…?」

その熱い瞳に
ふみのは目が離せなくなる。

ふみのの手を握る杏寿郎の手に
さらにゆっくりと力が込められる。

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