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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第1章 本家と分家




一ノ宮ふみのは
代々続く、一ノ宮家の長女として
この世に生を受けた。


父・健蔵(けんぞう)は寡黙で口数は多くはなかったが、
一族の繁栄と家族の幸せを一番に考えている人だった。

母・みちは漆黒の艶やかな髪をした美しい人だった。
常に笑顔を絶やさず、子ども達を第一に想ってくれていた。

父と母はいつも穏やかで、
そしてお互いを愛し合っていることは、
誰が見ても伝わってきた。

ふみのは、そんな両親の子であることが嬉しく、
相思相愛な父と母を見るのが大好きだった。


ふみのが産まれた後、
よしのと健一郎が産まれた。

妹のよしのは、一族で一番を争うほどのお天馬娘で、
切り揃えられた母譲りの艶やかな前髪が可愛らしい。

元気溌溂な瞳は、
いつも何か悪戯を企み、みちを困らせていた。

弟の健一郎は、よしのとは正反対な控えめな性格で、
泣き虫で臆病だった。

いつも母の足元に隠れて歩き、
愛嬌ある垂れ目はよく涙を滲ませていた。



とある日。
屋敷の庭先にある廊下に
みちと健一郎がいた。

「…よしのねえさまは、またなにか
 わるいことをしたの?」

みちの着物の裾を小さい手で掴みながら、
健一郎はみちを見上げていた。

「困りましたね…。
 お客様の草履を隠していたようです…。
 今回ばかりは、
 とうさまからも注意してもらいましょう」

みちは目を閉じ、はあと溜息をついた。
可愛い娘ではあるが、
悪戯は何度注意してもなかなか直らない。

悶々としていると、
後ろから誰かが走ってくる音が聞こえてきた。

「かあさま!
 お琴の練習が終わりました!」

笑顔で嬉しそうに
ふみのがみちの元へ駆け寄ってきた。

「今日は随分と長い時間練習をしていましたね」

みちはふみのの頭を優しく撫でる。
ふみのは更に笑顔になる。

「しかも一番難しいところも、
 弾けるようになりました!」

褒めて欲しそうに、
ふみのはみちに抱きついた。

みちは、まあ!と微笑み、
ふみのを優しく抱きしめた。

(かあさまのにおい、とってもいいにおい!)

そんなことを思いながら、ふみのは
みちの着物に顔を埋めた。










そんなやりとりを、少し離れた屋敷の廊下から
一人の少年が見ていた。

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