火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第14章 炎柱、そして迫る影
「俺は何も…!
俺も兄上に近づけるように
もっともっと、頑張ります!」
「ああ!また稽古をしよう!
父上にも報告をしてくる!
…ふみのは任務か?」
「はい!
少し前に伝令が入り…。
単独任務だと仰っていました」
「そうか…」
杏寿郎はふみのに
いざ伝えようと思うと少しばかり緊張した。
でも、今日この日まで同じ鬼殺隊士として
自分の側で支えてくれたふみのに
一刻も早く、感謝を伝えたかった。
そして、心にある、
この愛おしい想いも。
「きっとふみのお姉様も
喜んでくださると思います!」
そんな杏寿郎の背中を押すように
千寿郎は笑いかけた。
「千寿郎!ありがとう!」
「父上、よろしいでしょうか」
杏寿郎は槇寿郎の部屋の前に来ていた。
炎柱のみが纏うことを許されている
羽織を身につけて。
しかし、返事は無かった。
「父上、…どうしても
お伝えしたいことが、あります」
失礼しますと、
杏寿郎は返事を待たずして、
ゆっくりと襖を開けた。
そこにはいつものように
布団に寝そべる槇寿郎がいた。
杏寿郎の方には一切振り向かず、
腕に頭を乗せ、本を読んでいるようたっだ。
「父上。
この度、親方様より任命され
炎柱へとなることが出来ました。
鬼殺隊士として、
そして炎の呼吸の使い手として
より一層、精進して参ります。
父上のような炎柱を目指し…」
「柱になったからなんだ」
槇寿郎が、杏寿郎の言葉を遮った。
「くだらん。
どうでもいい。
どうせ大した者にはなれないんだ。
お前も、俺も。
…話しは、それだけか」
杏寿郎は何も言えなかった。
何も、言えなくなってしまった。
「……はい」
一言返事だけをして、
杏寿郎は静かに部屋から出た。
心に、侘しさが立ち込め、
突き放されたかのような寂しさが広がる。
柱になれば
以前のような父上に
戻ってくれるかもしれないと
心の何処かで
期待していた自分
俺のことを
認めてくれると
思ってしまっていた
喜んでくれると
思っていた
少しでもいい
喜んで、欲しかったんだ
俺を見て、
笑って欲しかった
以前の、父上のように