火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第14章 炎柱、そして迫る影
「だが─────…
お前の狂気に満ち、
激昂する様は気に入った。
鬼狩り共を殺せ。
柱を殺せ。
私の妨げになる存在全てを
鏖殺しろ」
「…必ずや、遂行してみせます。
無惨様─────…」
ベン
ベベン─────
気付くと、荒れ果てた木々が鬱蒼と生い茂る
深い森に懦倥は立っていた。
「ははっ…!!
俺は…!俺は…っ!!!
やっとの思いで、此処まで上り詰めた…っ!
俺は、遣り遂げる…!!
ああ、どんどん血が漲ってくる…!!
あの方の血が、
骨の髄まで行き渡るようだ…!!
腐った人間共め…。
柱だろうが何だろうが、俺は許さない…!!
俺は、決して人間を許さない…っ!!!」
その顔は般若のようだが、
爛れた顔の皮膚は垂れ下がり、
鍛え上げられた体は
ビキビキと音を立てながら
更に大きく形を変えた。
口から零れ落ちる唾液は、
その口元を更に爛れさせる。
眼球は、飛び出そうなほどに見開いていた。
息を荒げ、恐ろしい形相で乱れ狂い、
冷ややかな笑みを浮かべる。
そして、沸々と湧き上がる怒り。
懦倥が大木にギリッと爪を立てると、
ジュッと音を立て、異臭を漂わせながら、
その箇所はどろどろと液状に溶けていった。
懦倥は奇声のような笑い声を上げながら
その森の奥へと姿を消した。
静かに、
だが刻々と
この鬼の影は
ふみの達に迫り始めていた─────