火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第14章 炎柱、そして迫る影
「杏寿郎…?」
ふみのは心配そうに杏寿郎を見た。
「私、何か気に障ること
言っちゃった…?」
「いや!違うんだ!
何でも無い!」
杏寿郎は一瞬笑顔になるも
顎に手を当て
再び眉間に皺を寄せている。
(…この顔は、まだ何か思い詰めてる…)
杏寿郎にはいつも笑顔でいて欲しいと
ふみのはそう思わずにはいられない。
「…ねえ、杏寿郎!
少しだけ、遠回りして帰らない?
千寿郎くんへのお土産も買っていきましょ!」
「…ああ、そうだな!そうしよう!」
「ふふ、やっと笑ってくれた!」
「…っ!」
「杏寿郎とね、一緒に街に来れて、私嬉しくて…。
たくさん笑って過ごしたいなって、思ったの」
ふみのは頬を赤く染めて
照れながら話す。
折角のふみのとの時間を
色々と思い詰めてしまっていたことを
杏寿郎は悔いた。
「…すまない、独り善がりになっていた。
ふみのと一緒に過ごせる時間なのにな…」
杏寿郎は申し訳なさそうに
眉尻を下げた。
「杏寿郎、…笑って?」
ふみのは優しく微笑みながら
杏寿郎をまっすぐに見つめる。
(ああ、俺はこの笑顔の虜だな…)
杏寿郎も自然と笑みが溢れる。
必ず
父のような柱になり
そして
ふみのに想いを告げる
今はただ
目の前にある
すべき事を
果たしていくのみ─────
「そうだ!蜜璃ちゃんがね、
美味しい甘味処を教えてくれたの!
良かったら行ってみない?」
「それはいいな!是非行こう!」
二人はその甘味処でさつまいもの洋菓子を食べ
ふみののお気に入りの書店に立ち寄り
千寿郎の土産へ本を買った。
こんなにも晴れ渡る、心穏やかな日。
ふみのは杏寿郎と共に過ごせる喜びを噛み締め、
言葉では言い表せない程の幸せに満ち溢れていた。
二人が家に着く頃、
空はすっかり茜色に染まっていた。
「杏寿郎、
今日は一日ありがとう。
とっても楽しかったわ!」
「礼を言うのは俺の方だ。
俺もふみのと過ごせて嬉しかった。
…ふみの、
いつも俺の傍にいてくれて、ありがとう」
「…っ!
…杏寿郎……っ」
二人は、見つめ合う。
傾く夕陽が
杏寿郎の紅い瞳に、更に色を増していく。