火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第14章 炎柱、そして迫る影
「ふふ、大丈夫ですよ。
何か、気に入ったものがありましたか?
…その二段目の、白い絹織物ですか?」
どうしてそれと分かったのだろうと
ふみのは不思議に思った。
「はい!とても綺麗だなって…。
思わず見惚れてしまいました」
百合は小さく笑み、
ふみのを見た。
「そちらは御婚礼用の
白無垢に使われる生地なんです。
女性の皆様が殆どと言っていいくらい、
目を留めて下さる織物なんですよ」
「!!
…そ、そうなのですねっ!」
まさかそんな生地だとは思わず、
ふみのは驚いてしまった。
「ふみのさんは肌が白いので
とっても映えると思いますよ」
「あ、ありがとうございます…っ」
(まさか、婚礼のものだったなんて…っ)
ふみのは何故か緊張してしまった。
顔が熱く火照る。
「…きっとふみのは
何を着ても、似合うだろうな」
杏寿郎が微笑ましそうに
その純白の絹織物を見ていた。
(……、それって……)
「ふみのさん、その時は
いつでも声を掛けてくださいね?」
百合も優しく微笑んでいた。
「あ、はい!
ぜ、是非、その時は…っ!」
(……。
その時は、なんて…。
予定なんて全然ないけど…。
…いつか、そんな時が、
私にも来るのかな…)
百合は倉庫に仕舞ってあった
織物までふみの達に見せてくれた。
ふみの達は迷いに迷い、
ある年にほんの僅かしか取れなかった
希少な絹糸で織られた生地に決め、
それで羽織を仕立ててもらうことにした。
「そう致しましたら、
一月後あたりには出来上がります。
きっと素敵な羽織物になりますよ」
「はい!今日はご丁寧に
本当にありがとうございました。
完成が楽しみです!
また受け取りにお伺いします」
「はい、お待ちしておりますね」
お帰りも気を付けてと
百合はふみの達を見送り、
二人は店を後にした。
「蜜璃ちゃんに似合いそうな
生地が見つかって良かったわ!」
「ああ!そうだな!
…ふみの、さっきの、その」
「ん?」
「その!白無垢のことだがっ」
「し、白無垢!?…が、どうかしたの…?」
(きょ、杏寿郎ったら、
突然何を言い出すの…!?)