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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第14章 炎柱、そして迫る影



しばらくして蒸し器の蓋を開けると、
真っ白な湯気から
薄黄色に熱ったカスタプリンが
顔を覗かせた。

陶器の熱を冷水で冷やし、
三人で縁側で食べることにした。


今か今かと待ち侘びる杏寿郎と千寿郎に
ふみのはカスタプリンを手渡す。

「…初めて作ったんだけど…、
 どうかしら…?」

「! 甘く、良い香りがします!」
「これは見事だ!いただきます!!」

不安そうにするふみのだったが、
二人は匙を握りしめ、一目散に頬張る。

「うまい!!!」
「とっても美味しいです!!」

「本当に??よかったわっ!」

「これなら幾つでも食べられるな!」

「ふふ、また作るね!」

三人は束の間の休息を楽しんだ。


「ふみの、この後、良ければ俺と
 手合わせをお願いできないだろうか!」

「ええ、もちろん!喜んで!」

支度をしてくる!と杏寿郎は
先に稽古場に向かった。

「ふみのお姉様、ご馳走様でした!
 片付けは俺がやりますので!」

「本当に?
 いつもありがとうね、千寿郎くん」

そうふみのは言い残し、
杏寿郎の後を追った。





槇寿郎はいつもより遠くまで
街の中を歩いていた。

自分の言動を振り返り、
苛々と気が張り詰め、
気分が悪かった。


槇寿郎は、瑠火のことがあってから、
杏寿郎や千寿郎、ふみののことを
強く思うがあまり、悲しみを恐れ、
本来の自分を失っていた。


食い止められなかった瑠火の死

柱としての
自分の呼吸の無力さ

自分は
何も成せない
弱い人間なのではないかと

悪い事ばかりが
槇寿郎の脳裏をよぎる。


全てが

自分自身が

許せなくなっていた。


しかしそれでも、
杏寿郎達は、今も変わらずに
こんなにも落ちぶれた自分のことを
想ってくれていて。


声を掛けてくれて。


こんな自分を目標とし、
炎柱を目指している杏寿郎が不憫でならず、
父親として、合わせる顔がなかった。


以前のように振る舞うことも出来ず、
感情的になってしまう自分に怒りを覚える。



少しでも楽になりたくて、
ただ無心に、酒へと縋り付く日々。

気持ちが悪い程に、
嫌気が差してくる。



槇寿郎は何処へ向かうわけでもなく、
重たい足で歩き続けた。

家に着く頃には
もう陽が、傾き始めていた。


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