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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第14章 炎柱、そして迫る影



ゆっくり顔を上げると
杏寿郎と目が合う。

「ふみの、
 辛い思いをさせて、
 本当にすまなかった。
 ふみのは悪くない。
 …これは、誰も悪くないんだ。
 だからふみの、
 もうそんなに自分を責めないでくれ」

杏寿郎の、全てを包み込むように見る瞳に
ふみのは心を落ち着かせていた。

握ってくれる杏寿郎の手を
ふみのも握り返した。

「うん…っ、ありがとう。
 ありがとうね、杏寿郎」

杏寿郎は優しく微笑むと
ふみのの濡れる睫毛の涙を
人差し指で撫でるように絡めとる。

「…私、生まれて初めて、
 あんな大きな声で、
 話したかもしれない…。
 自分でも、びっくりしちゃった…」

ふみのは残った涙を自分でも指先で拭い、
申し訳なさそうに、ふうと息を吐いていた。

「でも、ふみの、
 大きな声は大切だ!
 遠くまで、良く聞こえるからな!」

いつも通りに溌剌と話す杏寿郎に
ふみのは、ふっと吹き出してしまった。

「ふふっ、そうねえ!
 …もうっ杏寿郎って
 本当に面白いこと、言うのねっ」

「ん?そうか?」

ふみのにいつもの笑顔が戻ると
杏寿郎も綻んだ。

とんとんと襖が鳴る。

ふみのが、はいと返事をすると
千寿郎が心配そうに顔を覗かせた。

「千寿郎くん!」

千寿郎は部屋に入り、
二人の側に座ってふみのを見た。

「…ふみのお姉様、あの…」

「千寿郎くん、
 さっきは驚かせてごめんなさい…。
 でももう、大丈夫!
 本当に、ごめんね…」

ふみのが千寿郎の頭を優しく撫でた。

「心配させちゃったお詫びに
 蜜璃ちゃんから教わった
 カスタプリンを二人に作るね!」

「かすたぷりん…!?
 それは一体、どんなものなんだ??」

杏寿郎と千寿郎は目を丸くしていた。

「牛乳とお砂糖と卵を混ぜて
 固まらせた洋菓子なんですって。
 出来たら声をかけるね!」

「わあ!ふみのお姉様、楽しみです!」



結局、杏寿郎と千寿郎は
ふみのの作る洋菓子が気になり
完成までずっと、台所でその様子を見ていた。

ふみのは、混ぜ終えた牛乳たちを
陶器の入れ物に流し込み、蒸し器で蒸した。

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