火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第13章 片想い − 恋咲く −
蓮と義勇は、
道に転がった釦を見つめる。
「ほ、本当にごめんなさいっ!!」
蓮は勢いよく頭を下げた。
「……」
蓮は転がった釦を拾い上げ、
申し訳なさそうに義勇を見る。
「あ、あの、義勇さん…、
家がすぐ近くなんです…。
その、少しだけ、お時間いただけませんか?
これ、お直ししたくて…」
「……。分かった」
「ありがとうございます。
無理言って、
ほんとすみません…」
蓮は項垂れながら、
義勇と共に欣善の家へと向かった。
欣善とゐとは思い掛けない義勇の訪問を
嬉しそうに出迎えてくれた。
義勇は縁側に腰掛けていた。
その横で、
蓮は義勇の隊服の上着に
釦を針でちくちくと縫い付けている。
「水柱様、
どうぞごゆるりとお過ごし下さいね」
ゐとは笑顔で義勇に湯呑みを手渡した。
義勇はぺこりとそれを受け取る。
「左近次のところで修行していたというのは
君のことだったんだね。
蓮から話は聞いているよ」
「…そうですか」
「ふふ、蓮ちゃん、
意外と器用なんですよ?」
「ゐとさん!意外とって何ですかっ!」
むっと照れている蓮を
あらあらごめんなさいねと
ゐとは口元に手を当て、笑っていた。
「…鱗滝さんとは…」
義勇が欣善に話しかける。
「ああ、入隊した時期が近くてね。
彼と良く稽古もしたものだ。
…彼に、沢山助けてもらった。
柱までになった人だ。
本当に、強く逞しい人だったよ」
欣善は昔を懐かしむように
空を見上げていた。
その欣善の様子を
義勇はじっと見ていた。
…ほんと、義勇さんって
何考えてるのか、全っ然分かんない…
蓮は横目で義勇をちらりと見ながら
釦を付けていく。
「欣善さん?
蓮ちゃんも水柱様と二人っきりで
お話したいことも、あるんじゃないかしら?」
「!?」
蓮は驚くように、ゐとを見る。
ゐとにはもう蓮の気持ちが
薄々気付かれているようだ。
ゐとが嬉しそうに笑っている。
蓮は自分の顔が熱ってくるのを感じた。
「ああ!そうだな!隊士同士、
話したいこともあるだろう。
じゃあ、義勇さん、どうぞごゆっくり」
欣善とゐとは別室へ向かっていった。
義勇は静かに頭を下げていた。