火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第2章 一族の破滅
驚きのあまり、
ふみのは声が出ない。
(なんで徳廣が鬼なんかに?
どうしてこんなことをするの??
皆んなが何をしたっていうの??)
混乱して、何も考えられない。
「…よお、ふみのお嬢様。
酷い顔だなあ?」
鬼の徳廣はにやにやと笑いながら話しかける。
「…どうして…どうしてこんな酷いことを…っ」
腹の底からふつふつと湧いてくる憎悪が、
恐怖心を消し攫っていく。
徳廣は、はっと歪んだ顔で笑った。
「…酷いだと?どっちがだ。
お前ら本家の存在で、
どれだけ俺が今まで苦しんできたことか」
「私達が何をしたっていうの?!」
ふみのは必死に歯向かう。
「…何をだと?!
本家のお前になんか分かるはずもない!!
ぬくぬくと周りからちやほやされて、気分いいよなあ?!
俺の立ち位置をどんどん追い詰めてきやがって!!
お前がいたせいで、俺がどんな目にあったか、
思い知らせてやるよ!!!」
ブンッと拳が飛んできた。
思わず目を瞑り、やられると思った。
ドンッ
勢いよくふみの達は後ろに倒れた。
頭を上げると、
そこには女中が頭から血を流し壁にもたれかかっていた。
「……っ。そんな……っ」
自分を庇ってくれた女中は既に息絶えていた。
「あーあ、後少しでお前を殺せたのに。
次こそは、殺す」
ふみの達に近づいてくる徳廣は
ものすごい圧で迫ってくる。
その時、よしのと健一郎が
徳廣に向かって走り、足にしがみついた。
「ふみのねえさまをいじめないで!!!」
「ふみのねえさま!!早く!!逃げて!!!」
「二人とも何をしているの!!だめよ!!やめて!!!」
徳廣は邪魔そうに足元の二人を見下ろす。
「……邪魔なんだよ」
目に見えない速さで、足元の二人を跳ね除ける。
二人は左右の壁に強く打ち付けられた。
「よしの!!!健一郎!!!」
目の前の光景についていけず、ふみのの頬に涙が溢れ落ちる。
憎悪と怒りと涙で、熱の辛さなんて微塵も感じなかった。
「……酷い。酷すぎる。私の家族を返してっ!!!」
「一番酷いのはお前だって。
お前がいて俺の人生はどん底だったんだよ!!!」