火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第13章 片想い − 恋咲く −
「伝令!伝令!南ノ方角、
街ノ外レニ、複数体ノ鬼ノ目撃情報有リ!
今カラ調査兼、夜間ノ見廻リヲ、トノ事!」
「月光!了解っ!」
「蓮、今から任務か?
無理はするな」
「はい、行って参ります」
「蓮ちゃん、気をつけてね…っ」
「師匠、ゐとさん、
必ず、戻ります」
蓮は欣善達に笑いかけ
家を駆け出した。
「全集中 水の呼吸 肆ノ型 打ち潮!!!」
蓮は刀を振り下ろし
迫りくる鬼の頚を斬る。
「蓮さん…!!
このままじゃきりがないです…っ!!」
「…くっ…っ」
あまりの鬼の多さに
蓮達は追い詰められていた。
(数が、多すぎる…っ)
蓮は他の隊士への援護すらも
ままならなくなっていた。
(このままじゃ、皆が…っ!)
「!!!
蓮さん!!後ろ!!!」
蓮が振り返ると
背後から一匹の鬼が牙を向けて
蓮に襲いかかってきていた。
(駄目だ、間に合わない…っ)
蓮は、死を覚悟した。
すると突然、
一人の隊士が目の前に現れた。
「全集中
水の呼吸
拾壱ノ型
凪─────」
その場にあった全ての音が静かに消え、
水面(みなも)に雫が弾かれたような音が響き渡る。
気付くと、其処にいた鬼達の姿は
全て跡形もなく消え失せていた。
すごい…
あの数を、一瞬で…
蓮は放心したままその場に立ってた。
目の前には、
後ろ姿の男の隊士が刀を鞘に納めていた。
隊士はその場を去ろうとしたので
蓮は咄嗟に声を掛けた。
「すみません、ありがとうございます…っ。
助けていただ…」
「ないか」
その隊士は足を止め、
振り向かずに口を開いた。
「……はい?」
「怪我は、していないか」
「…はい、大丈夫です…っ」
「…そうか」
その隊士は顔だけを蓮の方に向けた。
この人の、瞳…─────
「あ、あの…っ、貴方は…!」
「蓮さん!!大丈夫ですか!?」
「うん…今、この方に…、
……あれっ…何処にも、いない…」
蓮は辺りを見回したが
そこにはもうその隊士の姿は
見当たらなかった。
「さっきの型を使われるのって…、
水柱の冨岡さんですよね…」
「トミオカさん…?」