火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第13章 片想い − 恋咲く −
「…ごめんなさい、ゐとさん、
あたし、全然気付かなくて…」
「大丈夫よ。
…怖い夢を、見てしまったの?」
「…兄の夢を、見ていました」
「そう、だったの…。
大丈夫?もう少し横になる?」
「いえ…大丈夫です」
「…蓮ちゃん。…私は蓮ちゃんの
本当のお母さんではないけれど
蓮ちゃんのこと…、
いつも想っているからね」
「…ゐとさん、
いつも本当に、ありがとうございます…っ」
「蓮ちゃん、大丈夫よ。
私が側にいるからね。
今は…、泣いてしまいなさい」
「…っ、ゐとさん…っ」
ゐとの腕の中で
蓮は声を殺しながら泣いていた。
ゐとはゆっくりと蓮の頭を撫で、
背中を摩っていた。
まるで、
本当の母のように。
欣善は襖に隠れるようにして
二人の様子を心配そうに見ていた。
蓮は、一彰が亡くなった後
人伝えに“鬼殺隊”のことを知った。
そこへ入隊する為の人を育てる
“育手”もいるということも。
“人喰い鬼を狩る剣士が集まる
政府非公認の組織”
それを耳にした日から
蓮は、自分もこの世にいる鬼を抹消したいと
兄を殺した鬼達を滅したいと思い始めていた。
しかし大叔父母にそれを言うと、
酷く心配をかけると思った蓮は、
ここを出て働きに出たいと懇願し続けた。
大叔父母も、蓮を愛娘のように
可愛がっていたので、
独り立ちさせることをとても心配したが
やっとの思いで認めてもらい、
十三歳になった翌日、大叔父達の家を出た。
そして育手をしている
菟田野欣善に会うべく
蓮は歩みを進めた。
欣善の家に漸(ようや)く辿り着き、
必死に頼み込み、
修行を始められることになったのだ。
そして、蓮が鬼殺隊に入隊して
四年が過ぎようとしていた。
ふみのとも切磋琢磨し、
共に階級も上げてきた。
ふみのとの時間が
蓮にとってかけがえのないものだった。
共に鬼に立ち向かえば
何も恐怖は感じなかった。
蓮は、いつも全力だった。
自分はこの世で
きっと、やるべきことがある筈だと
何かに生かされていると
思っていた。
いつか、隊士として死にゆくことに
命を捧げることに
不思議と恐れを感じていなかった。
冨岡義勇という男に
出会う前までは───────