火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第13章 片想い − 恋咲く −
その男の子、
妹を連れて鬼殺隊を目指してるって
どういうことなんだろ
家族が鬼に襲われて
生き残った妹を連れて…とか、なのかな
あたしも、もしお兄ちゃんが生きていたら
この世界を知ることはなかったしな…
洗濯物を干し終えて
ゐとと朝食の支度をしながら
その“妹”のことを考えていた。
「蓮ちゃん?どうしたの?考え事?」
ゐとは心配そうに蓮の顔を覗く。
「あ、いえ!さっきの師匠の手紙のことが
気になっていただけです」
「ああ、妹さんを連れてって話ね」
「はい…。なんか、人生って、
何が起こるか、ほんと分かんないなって…」
「…本当にそうね。
良い事も、悪い事も、神様は与えて下さるものね。
でも今此処にいられるのは、
沢山の人が支えてくれているから、なのよね、きっと」
ゆっくりと、でも力強く話すゐとの言葉が
蓮の心にすうっと流れ込んでくるようだった。
「うん…きっと、そうです。
毎日感謝、しなくちゃですね」
蓮とゐとは、顔を合わせて微笑んだ。
朝食を終えると
蓮と欣善は稽古を始めた。
蓮が鬼殺隊に入ってから
二年が経っていた。
最終選別で出会ったふみのとは
蓮にとって唯一無二の親友だった。
蓮は何かあれば、月光を飛ばし
ふみのと連絡を取り合った。
合同任務で見せる二人の息の合った技は
周りから“阿吽の呼吸”とまで言われていた。
欣善は水の呼吸の使い手だった。
片腕を失っているとはいえ、
その強さは健在で
日々の鍛錬を欠かすことはなかった。
欣善が一本の腕で操る剣捌きに
蓮は目で追いつくことができなかった。
「蓮!この速さにまだ追いつけないか!!」
「……くっ…っ!」
欣善の素早く振るう木刀に、
蓮は身動きが取れない。
気付いた時には
目の前に刃が現れている。
「遅い!!!」
欣善の刀が蓮の刀に迫る。
(目で見るな、感じろ…っ!!)
蓮は目を閉じ、
周りの波動に意識を集中させる。
(今だ…っ!!!)
「水の呼吸 参ノ型
芬木 流流舞い(かおりぎ りゅうりゅうまい)!!」
蓮の刀から大きくうねる水飛沫と共に
透明な花弁が勢い良く宙を舞った。
その花弁が静かに舞い落ちると同時に
欣善の刀も中央部分から切り落とされていた。