火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第13章 片想い − 恋咲く −
あたしの覚えてる
小さい頃の一番の記憶は
大好きな兄と離れ離れになった日のこと
兄とは六つも離れていたけど
本当に可愛がってくれた
知らないことを
沢山教えてくれた
何処に行くにも一緒だった
あたしは、お兄ちゃんが大好きだった
でも、両親が病死して
親がいなくなったあした達は
別々の親戚の家に引き取られることになった
『いやっ!!
ぜったいおにいちゃんとはなれたくない!!』
『蓮、我儘を言っては駄目だ。
これはもう、仕方ないことなんだ』
『ぜったいやだっ!!
おにいちゃんといっしょにいく!!』
『蓮ちゃん?もうこの先
ずうっと会えない訳じゃないのよ?
一彰(かずあき)くんを
困らせたらいけないわ』
『いやっ!!
ぜったいにいかないもん!!』
『…困ったわねえ…』
『叔母さん
少しだけ時間をもらってもいいですか?』
『え、ええ…』
『蓮?俺の目を見て?』
『…いや』
『俺は蓮が見てくれるまで
ずっとこうしてる』
『…おにいちゃん、れんのこと
きらいなんでしょ』
『どうして?』
『れんとはなれるの、さびしくないんだ』
『蓮、俺の目を、見るんだ』
『……』
『蓮』
『…なに…?』
『…うん、
蓮の目は母さんそっくりだ。
父さんは蓮の瞳を見ては
綺麗だと何度も呟いていたよ』
『…ほんとに?』
『ああ。
俺と蓮の目は、母さん譲りなんだ』
『れんとおにいちゃん、おんなじ?』
『うん、おんなじだ。
…蓮、俺とひとつ、約束をしてくれないか』
『やくそく?』
『うん、文通をしよう』
『…ぶんつう?』
『そう、手紙を送り合うんだ』
『でもれん、もじ、かけないよ』
『うん、言葉じゃなくてもいいんだ。
蓮が見たもの、感じたものを
何でもいいから形にして
俺に送ってくれないか?』
『もじが、かけたら、
ことばでも、いいの?』
『ああ!もちろん!』
『そしたら、れん、もじのれんしゅう、する!
もじをたくさんかいて、おにいちゃんに
おてがみおくる!』
『うん!蓮の書いた手紙を
楽しみにしてるよ!』
『おにいちゃん!
ゆびきりげんまん!』
『うん!約束だ!』
『一彰さん、急かして悪いのだけど
そろそろ列車の時間が…』