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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第12章 片想い



「私、ふみのさんと師範が憧れで…っ!
 いつかお二人のようになりたいなって、思うんです」

「…へ!?私と、きょ、杏寿郎みた、く!?えっ!?」

蜜璃の思いに、
ふみのの顔は忽ち赤く染まる。

「えっ?あんた達、まだ恋仲じゃなの??
 もー焦ったいねえ!
 好きなんでしょ?杏寿郎くんのこと!」

「杏寿、郎が、好き……っっ?!」

(もう、そう思っただけで
 心臓が、止まりそう……っっ)

もうふみのの頭の中は
沸騰寸前で何も考えられなくなっていた。

蜜璃は自分の発言によって
紅潮してしまったふみのの頬に
両手で必死に風を扇いであげていた。

ふみのは両手で頬を包み
もじもじと赤面したまま、
話し続ける蓮を横目で見た。

「…でも、今のままの距離感が、いいってこともあるよね。
 相手に必ず、好きって伝えるのが、正解でもないしさ。
 人を想うって、ほんと、難しい…」

蓮の表情が曇っていた。
そんな蓮をふみのは初めて見た。

「…蓮?」

「蓮さん、何かあったんですか…?
 あ!差し支えなければで!!大丈夫です!!」

蓮は、ふうと小さくため息をつき、
遠くを見つめたまま、口を開いた。


「…鬼殺隊の、冨岡さんって人、
 会ったことある?」


「「…トミオカサン?」」

ふみのと蜜璃の声が重なる。
二人とも、初めて聞く名前だった。

「そう、水柱の冨岡義勇さん。
 あたしもこの間の任務で
 初めて会った人なんだけど」

ぽつりぽつりと話す蓮の表情は、
少し戸惑っているような、
でもどこか淡い恋心を抱いているような
そんなふうにも見えた。

「この間の任務先で合流したんだけど、
 予想上に鬼が多くて。
 あたし、鬼を交わしきれなくて
 ああ、殺(や)られるって思った。
 そしたら、冨岡さんが庇ってくれて
 助けてもらったの。
 …冨岡さんの水の呼吸、すっごい綺麗で強くて
 もう完全に、見惚れてた。
 …自分と同じ呼吸って思えない程に」





『すみません、ありがとうございます…っ。
 助けていただ…』

『ないか』

『……はい?』

『怪我は、していないか』

『…はい、大丈夫です…っ』

『…そうか』





蓮と冨岡義勇は
その日、初めて言葉を交わしたのだった。

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