火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第12章 片想い
寝台が傾きそうな勢いで、
蜜璃はふみのと杏寿郎へ迫ってきた。
「私っ、今日からまた稽古が始まる、と思って
家に行ったら、千寿郎くんから
師範と、ふみのさん、が
蝶屋敷に、泊まってるって、聞いて……っ」
蜜璃は声を詰まらせながら
顔はもう涙でぐしゃぐしゃだった。
「もう居ても立っても、居られなくて
千寿郎くんを連れて
ここまで、来てしまいました…っ」
「要達の伝達が来たところに
ちょうど蜜璃さんがいらっしゃったんです…!
兄上が元気になってくれて
本当に安心しました…っ」
千寿郎もほっとした様子で
杏寿郎の寝台に近寄る。
杏寿郎は千寿郎の頭をぽんぽんと
優しく撫で、その表情は兄そのものだった。
「千寿郎、心配をかけたな。
甘露寺にも何も連絡もせず
すまなかった」
「本当に、よかったです…っ、
いつものお二人が見れて、よかったです…っ」
ふみのは蜜璃の涙を拭いてあげた。
「蜜璃ちゃん、心配かけてごめんなさい。
私は付き添いでいただけだから、
何ともないの」
「一泊して大分回復した!
また今日からでも
稽古ができるくらいだぞ!」
ふみのと杏寿郎の笑顔に
蜜璃は余計に涙が溢れてきた。
「うわ〜〜んっ!!
本当によかったですうぅっ」
蜜璃はふみのに抱きつき
ぎゅうっと腕に力を込めた。
「心配してくれて、ありがとうね。
蜜璃ちゃん」
ふみのはよしよしと
蜜璃の背中を摩った。
コンコンと
扉が鳴った。
扉が開くと、そこにはしのぶと
アオイの姿があった。
「賑やかな声が聞こえると思ったら
皆さんお揃いだったのですね」
「全く!朝からこんなに騒がしくされて!
他の方はまだ寝ていらっしゃるのですよ!
廊下まで走って…っ!」
「はっ!!廊下を走ったのは私です…っ。
ご、ごめんなさいっ!!」
蜜璃は何度も頭を下げて
アオイに謝っていた。
全くもう!とアオイは怒りつつも
やれやれと笑みを落としていた。
しのぶもふみの達の楽しそうな様子に
胸を撫で下ろした。
「煉獄さんは、もう少しだけ経過をみたいので
こちらに居ていただけますか?
ぶり返しても大変なので、
あと数日ほど、処置を行いたいと思います」