火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第12章 片想い
ふみのは恐る恐る、杏寿郎へ聞いてみた。
「うむ、確か、
『目が覚めたら
一番に名前を呼んで欲しい』と。
俺にはそう聞こえたが?」
(〜〜〜っ!!
もうばっちり聞こえてるじゃない…っ!!)
「…違ったか?ふみの」
「………。違わない、です…。
…もうっ!ちゃんと聞こえているなら
なんで寝ている振りをしていたのっ??」
「振りではないぞ!本当に眠っていた!
でも聞こえてきたんだ。夢の中で、ふみのの声が」
ふみのは恥ずかしさのあまり、
杏寿郎の顔を見れなかった。
(杏寿郎ったら…っ)
ふみのはふうと息を吐くと
杏寿郎の手がふみのの頬を撫でてきた。
「だが、ふみのの願い通り、
俺は起きて一番にふみのの名前を呼んだ。
…まだふみのは微睡んでいたがな」
「…!確かに、そうだった…!」
起きた直後で眠気眼だったが
よく思い出してみると、
杏寿郎はふみのの名前を呼んでくれていた。
二人は目が合うと、
ふっと吹き出して笑った。
「もう杏寿郎には降参っ!
一本取られましたっ!」
もう私の負け!とふみのは
照れながら髪を耳に掛けた。
杏寿郎も笑顔になる。
「…笑ってくれて、良かった。
やはりふみのの笑顔は
いつも俺に元気をくれるな」
「私も杏寿郎の笑った顔、好きよ」
布団についていたふみのの手の上に
杏寿郎は自分の手を重ねる。
「ふみの、いつも感謝している」
「それは私の台詞よ。
…いつもありがとう」
杏寿郎はこのまま
ふみのに想いを伝えようか迷った。
(柱になるまではと思っていたが、
ふみのの前ではこんなにも気が緩んでしまう…)
ふみのは杏寿郎の目付きが変わったのが分かった。
「ふみの、俺は…」
タタタタダダダダダダッッ!!!
「「!?」」
誰かが廊下を走る足音が
近づいてきた。
ガラッと扉が勢い良く開くと
そこには涙目になりながら目を開き切った蜜璃と、
蜜璃に無理矢理走らされたのだろうか
千寿郎が半分白目になりかけて
肩で息を切らしていた。
「師範〜〜〜っ!!!
大丈夫ですかああっ!!!」