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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第12章 片想い



ふみのの頬に
杏寿郎は手を添える。

「……かった」

「…?」

「…杏寿郎の目が覚めて、
 本当に、良かった……っ」

ふみのの目から
ぽろぽろと涙が落ちた。

「ずっと此処に
 居てくれたのか?」

「うん…杏寿郎の目が覚めるまで
 此処に居させてくださいって
 しのぶさんにお願いしたの」

「そうだったのか…。
 その体勢では寝づらかっただろう」

「ううん、全然平気よ!
 杏寿郎の顔を見たら、なんともないっ!」

まだ涙の跡が残るふみのの頬を
杏寿郎は両手で包み込んだ。

「沢山泣かせてしまったな」

「もう大丈夫だからっ!
 あ!千寿郎くんにも知らせないと!」

ふみのは恥ずかしそうに
そっと杏寿郎の手を自分の頬から離した。

寝台のすぐ隣の窓を開けると、そこには
杲と要が一緒に、近くの木の枝に留まっていた。

「杲さん!要さん!
 おはよう!」

「杏寿郎!目覚メタ!
 千寿郎ニ、伝エテクル!」

「要さん、ありがとう!」

二羽は一緒に煉獄家へと飛んでいった。

空は雲ひとつなく、青く晴れていた。


「ふみの」

杏寿郎に呼ばれ、ふみのは振り返る。

「此処に座ってくれないか」

杏寿郎が、
寝台に腰掛けるようにと
ぽんぽんとと布団の上を優しく叩く。

ふみのはこそばゆい気持ちで
杏寿郎が叩いた場所に腰を下ろした。

顔を横に向ければ
すぐ側に杏寿郎がいる。

(昨日はあんなに沢山話しかけられたのに…っ)

いざ杏寿郎を目の前にすると
ふみのは緊張して
何も言えなくなってしまった。

「ふみの…?
 眠っている間に
 何度もふみのに呼ばれた気がした。
 何か俺に、話しかけていたか?」

(え…?!嘘…!
 もしかして全部聞こえていたの…?!)

ふみのの心臓がばくばくと鳴り始めた。

「え!?な、何も言ってないわっ!!」

「ほう、そうか」

杏寿郎はにやりとふみのを見る。

「俺はどんな時でも全集中常中を使ってる。
 治療中ではあったが、多少のことは覚えているぞ…?」

ふみのは杏寿郎の謎の笑みが恐ろしく
まともに顔を見れなかった。

「そ、そうなの!さすが甲の階級の隊士様ねっ!
 …ちなみに、なんて、聞こえていたの?」

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