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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第12章 片想い



大分、日も傾いてきて、
部屋には夕日が差し込んできていた。

「千寿郎くん、私はこのまま杏寿郎が起きるまで
 側にいていいかな…?」

「はい!…でもふみのお姉様は大丈夫ですか?」

「全然大丈夫よ!
 遅くなりそうだったら、
 しのぶさんにお願いして泊めてもらおうかな。
 杏寿郎が目覚めたら、杲さんから連絡するね」

「分かりました!
 ふみのお姉様、
 くれぐれも無理はされないでください…っ」

「うん!ありがとう」

千寿郎は部屋を出て、
家に戻っていった。





部屋の中は、
どんどん夕焼けの色に染まっていく。

こんなに静かな時間はいつぶりだろう。


ふみのは椅子に座ったまま、
穏やかに眠る杏寿郎を見つめる。

「…杏寿郎。
 二人っきりになれる時、
 いつも何方かが怪我をしているね…」

杏寿郎は静かに寝息を立てている。

ふみのは愛おしそうに
杏寿郎の寝顔を見つめた。

杏寿郎の長い睫毛が
夕陽に照らされてきらきらと光る。

「ごめんね…杏寿郎…」

ふみのは杏寿郎の手を握る。

あたたかい杏寿郎の手に
彼が生きていることを感じる。


あんなに小さかった手が
こんなにも大きく、逞しくなっていて。


「杏寿郎の弱いところも
 私に見せて欲しいのに…。
 これじゃ私ばっかり泣き虫みたいじゃない…」


ふみのはゆっくり持ち上げた杏寿郎の手を
自分の頬に擦り合わせた。

その時、
頬につけていた杏寿郎の手が
ぴくりと動いた。

「…!杏寿郎…?」

杏寿郎は目を覚ます様子はなく
規則的な寝息を立て続けていた。


ふみのは杏寿郎の手の甲に
そっと触れるだけの口付けを落とした。


「杏寿郎…。目が覚めたら
 一番に私の名前を呼んでくれる…?
 …ふふ、寝ている杏寿郎には
 何でも言えちゃうね」

ふみのは眉尻を下げて
自分の臆病さに呆れて笑ってしまう。

ふみのは
このままずっと見ていたいと思いながら、
杏寿郎の手を握ったまま
寝台にもたれるように
いつの間にか、眠りについてしまった。



しのぶは杏寿郎の点滴の確認をするため
部屋に向かった。

扉を鳴らすが返事がなく、そうっと開けてみると
ふみのと杏寿郎の二人の寝息が聞こえてきた。

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