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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第12章 片想い



「俺、兄上に話したんです。
 隠していたら、その方がもっと心配かけるって…。
 でも…─────」


『ふみのには言わないでくれ。
 心配をかけたくないんだ。
 彼女の悲しむ顔を見たくないんだ…』


「……っ」

ふみのは目を閉じ、
胸に手を当て、ぐっとその手を握りしめる。

「千寿郎くんにまで、私のことで、
 …本当にごめんね。
 私…全然、駄目だね…っ」

ふみのの視界がまた涙で滲む。

「ふみのお姉様…!違います!
 兄上は、本当に、ふみのお姉様のこと…っ!
 だから……っ」

千寿郎は杏寿郎の想いを
自分の口から言っていいのか
分からず、その先が言えなかった。

ふみのも千寿郎の気持ちに
救われていた。

「ありがとう…ありがとうね、千寿郎くん。
 いつもたくさん支えてくれて、
 本当にありがとう…っ」

溢れそうになる涙を抑えて
ふみのは千寿郎に微笑む。



処置室の戸が開くと、
しのぶが出てきた。

「点滴を開始したので、
 様子を見つつ経過を追っていきたいと思います」

「しのぶさん、本当にありがとうございます。
 あ、あの、しのぶさん…一つお願い事が、あって…」

「? 何でしょう?」

「その、杏寿郎が目を覚ますまで、
 傍にいても、いいでしょうか…っ」

しのぶは緊張しながら言うふみのに
ゆっくりと微笑みながら返事をした。

「ええ、もちろん。
 構いませんよ」

「ありがとうございます!」

ふみのは嬉しそうに
しのぶに頭を下げた。

「そうしたら、煉獄さんを
 個室の部屋へ移動しますね」

「はい!分かりました。
 ……個室?大部屋でなくてですか?」

しのぶはふみのに
にっこりと笑いかける。

「煉獄さんが目が覚めたら
 積もるお話もあると思いますから、
 その方がゆっくりできると思いまして」

「・・・」

「あら?ふみのさん、
 顔が赤いですよ?
 解熱剤、いりますか?」

「だ、だいジョウブですっ!」

さらににっこりと笑うしのぶに
ふみのはたじたじになった。



杏寿郎は個室の部屋に移動し、
千寿郎は一度家に戻り、
杏寿郎の着替え等を持ってきてくれた。

ふみのは寝台で眠る杏寿郎の隣で
椅子に掛けていた。

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