火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第12章 片想い
ふみのは、
杏寿郎の思いにぎゅっと胸が締め付けられる。
痛かったただろうに
辛かっただろうに
私に心配かけまいと
何もない素振りをして
家に帰ってきて
くれていたなんて
全然気付いてあげられなかった
ごめんね
ごめんね、杏寿郎
私だけが守ってもらうばかりで
私は全然、
杏寿郎を守れていないよね
杏寿郎を
一番に苦しめているのは
私なのかな
ふみのの目から
大粒の涙が零れ落ちた。
しのぶの手が
ふみのの頬に伸びてきて
涙をそっと拭いてくれた。
「ふみのさん。
ご自分を責めないでください。
これは私の責任です。
本当に、申し訳ありません…」
「そんな…。
いつも側にいるのに、
全然気付いて、あげられていませんでした。
杏寿郎に悪いことを、しました…」
ふみのの涙は止めどなく溢れてくる。
「ふみのさんに心配を、
かけたくなかったのでしょう…。
…煉獄さんはいつもふみのさんのことを
気にかけていらっしゃいます。
きっと心から大切に想っているのだと思います。
今回のことは、全て私の責任です。
数日程、点滴をすればすぐに完治すると思いますので、
このまま煉獄さんを
お預かりさせていただいてもよろしいですか?」
ふみのは涙を拭い、
しのぶに深く頭を下げた。
「本当にありがとうざいます…。
よろしくお願い致します」
しのぶは静かに笑みを落とすと
処置室にいる杏寿郎へと点滴をしに戻った。
ふみのは長椅子に腰掛けいたが、
どこか虚な気持ちだった。
そんなふみのを
千寿郎はそっと見つめていた。
「ふみのお姉様…?」
千寿郎の声に
ふみのははっとした。
「ご、ごめんね!
なんかぼーっとしちゃってた…っ」
「…あ、兄上に、言うなと
言われていたんです…」
「え…?」
「本当に、ごめんなさい…っ。
肩の傷が治っていなかったので
蝶屋敷に行くように何度も言っていたのですが
ふみのお姉様に心配をかけてしまうので
このまま様子を見ると…」
「…そう、だったの…」
千寿郎はぎゅっと目を瞑り
自分のしたことを後悔していた。