火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第12章 片想い
ふみのの呼びかけにも
杏寿郎は全く反応がない。
(もしかして、血鬼術…っ?!)
ふみのの額にも冷汗が滲んでくる。
「杏寿郎、凄く熱い…っ!
千寿郎くん!杲を飛ばして
隠に来てもらうように伝えて欲しい!
蝶屋敷にも連絡を!お願い!!」
「わ、分かりました!」
千寿郎は杲に言付けを頼むと
すぐに隠達が来てくれた。
隠達は杏寿郎を抱き抱え、
ふみのと千寿郎も一緒に
蝶屋敷に向かった。
ちょうどしのぶも
帰宅したばかりだったらしく
すぐに杏寿郎の処置をしてくれた。
ふみの達は処置が終わるまで
廊下の長椅子に掛けていた。
暫く経つと
処置室の扉が開いた。
「ふみのさん、千寿郎さん」
しのぶは優しく
ふみの達を呼んだ。
「杏寿郎は…っ!
杏寿郎は大丈夫でしょうか!?」
ふみのはしのぶに駆け寄る。
「今は落ち着いて、眠っています。
…以前の肩の傷が
しっかり完治していなかったようです。
こそから炎症を起こし、細菌感染により、
発熱したと思われます」
「肩の傷…!?」
(でも怪我はないって、言っていたのに…っ)
ふみのは、はっと思い出した。
ふみのが蝶屋敷に泊まることになった日、
杏寿郎が見舞いに来てくれた時に見た、首元に見えた包帯を。
『杏寿郎…っ!首の包帯、どうしたのっ??』
『ああ!これか!先日の任務でな!
不覚にもやられてしまった!
でも既に傷口は塞がっている!問題ない!』
(もしかしてあの時の怪我が…っ?!)
「煉獄さん、ふみのさんが
此処へ一泊する数日前に
肩に怪我をされたんです。
泊まって点滴をするように強く言ったのですが、
内服薬でいいとおっしゃるので
多めに処方してお帰りになったんです…。
ごめんなさい、私ももっと強く引き止めるべきでした」
しのぶは申し訳なさそうに俯く。
「どうして、
ちゃんと処置を受けなかったのでしょうか…。
しのぶさんの指示を聞かないなんて…」
しのぶは口を開いたが、少し躊躇いながら
ふみのへ話し始めた。
「…その日は、ふみのさんが、
非番だと、おっしゃっていました。
出来るだけ早く家に戻りたいと、
お話されていたんです…」
「……っ!」