火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第11章 煉獄家への継子
杏寿郎は沈みかけている
濃い藍色と燃える夕陽の諧調に
ゆっくりと目を向けた。
「…師範??」
物思いに耽っていた杏寿郎の顔を
蜜璃はそっと覗き込む。
「…ああ、すまない!
考え事をしていた!」
蜜璃に呼ばれ、杏寿郎はふと我に返った。
いつもの溌剌とした杏寿郎の表情に
蜜璃もぱっと笑顔になる。
「師範!私、師範とふみのさんのこと
ずっと応援していますからねっ!」
ぐっと拳を握り、蜜璃は意気込む。
杏寿郎は蜜璃の言葉に
心があたたまっていくのを感じた。
「ありがとう、甘露寺」
杏寿郎は西の夕空に瞬く一つの星を見つめ、
ふみのへの想いと決意を
胸に強く誓ったのだった。
するとそこへ
千寿郎がやってきた。
「兄上!蜜璃さん!
お待たせしました!
夕食の用意ができました!」
「わーいっ!ありがとう!千寿郎くん!
お腹ぺこぺこなのっ!」
「千寿郎、いつもすまないな!
では頂くとしよう!」
三人は居間へと向かった。
夜は更に深まっていく。
空には
儚くも、小さく煌めく
満天の星達が姿を現していた。
夜の暗闇が明ける頃、
ふみのは数人の隊士達と共に
街に潜んでいた鬼を見つけ出し、
頸を斬り落としていた。
「…もう、これで全部ね」
鬼は数匹おり、
建物と同化して身を潜めていた。
ふみのは
自分より階級の下の隊士の援護もしつつ、
全ての鬼を倒し終えた。
「怪我人は?」
「数名、切り傷を負っていますが、
命に別状はありません!」
「そう…よかったわ。
でも念の為、蝶屋敷へ行ってもらうように」
「はい!」
隊士は他の隊士達にもふみのの指示を伝え、
特に怪我は無い隊士は帰宅することになった。
その中の、ある隊士がふみのへと声をかけてきた。
「あの…ふみのさん」
「? 何かしら」
「あ、あの、俺…ふみのさんの呼吸のこと…」
何か言いづらそうに、
その隊士はふみのと目を合わせようとしない。
「? 私の呼吸が、どうかしたの?」
「い、いや!その、俺、ふみのさんの
光の呼吸のことで、陰口言って…。
蓮さんにめちゃくちゃ怒られて、その…っ」
隊士の言葉に思わず、
ふみのはあははと笑った。