火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第11章 煉獄家への継子
「杏寿郎!お帰りなさい!」
「ふみの!
今戻った。これから任務か?」
「そうなの、今から行ってきます!
杏寿郎、怪我はしてない?大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ!問題ない!」
「そう、それはよかったわ…っ!」
ふみのはほっと胸を撫で下ろす。
「ふみのお姉様!」
廊下へ目を向けると
千寿郎が玄関へと走ってきた。
「今から行かれるのですね…。
どうか、お気をつけて」
千寿郎も不安そうではあったが
笑ってふみのを送り出してくれた。
「千寿郎くん、ありがとう!行ってきます!
杏寿郎もゆっくり休んでね!」
ふみのは二人に笑いかけると
玄関の引き戸に手をかける。
「ふみの」
杏寿郎に呼び止められて
後ろを振り向くと、杏寿郎の手が
ふみのの手と重なった。
そのまま杏寿郎に
ぎゅっと手を握られる。
「…くれぐれも、無理だけはするな」
杏寿郎の瞳は、
じっとふみのをとらえたかと思うと
ゆっくりと近付いてきた。
(…っ!
えっ、ち、近い…っっ)
ふみのは思わず目をぎゅっと瞑ると
こつんと自分の額と、杏寿郎の額がぶつかる。
「…少しだけ、
こうさせてくれないか」
ふみのの額に
杏寿郎のあたたかい温度が伝わってくる。
ふみのは杏寿郎との近さに胸が高鳴るも、
ゆっくりと目を開け、杏寿郎の頬をそうっと撫でる。
「…杏寿郎。
ちゃんと、帰ってくるから」
杏寿郎はゆっくり額をふみのから離し、
優しく笑うふみのの瞳を見つめる。
その笑顔が杏寿郎にもふわりと伝わった。
「ああ、ふみのの帰りを
此処で待っている」
「うんっ!行ってきます!」
二人は手を緩やかにほどき、
ふみのは夕焼けで赤く染まる外へと駆けて行った。
杏寿郎は夕食が出来るまで
蜜璃の稽古についていた。
「甘露寺!!まだ隙があるぞ!!」
「はいぃっ!!」
蜜璃も負けじと木刀を振るう。
(でも、さっきよりは打ち返せてる…っ!!)
弱点である、左側から仕向けられた
杏寿郎の木刀を
蜜璃は地面に片手をつき、
その腕を軸にして体を立て、避け切った。
(躱せた…っ!!!)
「やるな!!甘露寺!!」