火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第11章 煉獄家への継子
二人は、再び歩き出した。
振り返らずに
前を向いたまま。
ひたすら前を見て
歩き続けた。
その後もふみのと蓮は
隣街まで聞き込みをしに行ったが
有力な情報は手に入らず、
寧ろ鬼など今まで見たことがないとまで
言われてしまった。
気にし過ぎているだけなのであろうか。
本当に鬼はいないのだろうか。
それでも、ふみのと蓮は定期的に
見廻りを続けていくことにした。
ふみのの腕の怪我も大分回復していたが
しのぶとの診察時に、あと数日程の自宅安静との
指示が出たため、運動も兼ねて、
千寿郎と買い出しに出かけていた。
「ふみのお姉様と久しぶりに
街に来れて楽しかったです!」
「私も楽しかったわ!
今日はありがとうね!」
「しかも本まで買っていただいて…!
大切に読みます!」
「うん、今度は杏寿郎も誘って行きましょ!」
「はい!!」
道の角を曲がると、
門の前に、髪が桃色の、三つ編をした少女が
家の中をうかがうように身を屈めていた。
(…誰だろう…?)
ふみの達は近寄って声を掛けた。
「あの…何か、御用でしょうか…?」
桃色の髪の少女は、肩をびくっとさせて
ふみの達に振り返った。
「!!! ご、ごめんなさいっ!!」
今にも泣き出しそうな顔で
少女は頭を勢いよく下げた。
「い、いえ!あ、あの、何方様でしょうか…?
お名前を、お伺いしてもよろしいですか…?」
ふみのは恐る恐る聞くと
少女は潤んだ瞳で顔を上げた。
「わ、私!甘露寺蜜璃と申しますっ!
煉獄杏寿郎様は、
こっ、こちらに、
お住まいでしょうか…っ!?」
ふみのと千寿郎は驚いて目を合わせる。
「あ、あの、杏寿郎は、俺の兄ですが…」
千寿郎が緊張気味に答えると、
少女は、ぱっと笑顔になった。
「…!!!
私!煉獄さんの継子になりたくて
こちらに参りましたっ!!」
目をきらきらさせながら話す少女の笑顔に
ふみのはどきりと胸が鳴った。
(なんて可愛らしい女の子なんだろう…っ)
ふみのと千寿郎は
その少女、蜜璃を家の中に招き入れた。
「す、すみません!
突然お邪魔してしまって…っ!」
蜜璃は申し訳なさそうに
ふみのを見た。