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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第11章 煉獄家への継子



「…ふみの…此処が……っ」

蓮は恐る恐る、ふみのの顔を見る。

「…そう。私の家があった、場所」

ふみのの声は
深く、沈んでいくようだった。

「…もう時間は経っているのに
 昨日のように、あの日の夜を、思い出すの」

淡々と話すふみのの言葉を
蓮は静かに聞いていた。

「此処に来るのが、ずっと怖かった。
 自分が、どうにかなってしまいそうな、気がして」

しかし、ふみのは落ち着いていた。
表情も変えずに、ただじっと、前を見ていた。

「…私、逃げていたのかもしれない。
 あの夜を思い出すのが、怖くて。
 此処に来ることを、
 ずっと恐れていたのかも、しれない」

ふみのはぐっと奥歯を噛む。
握った拳に力が入る。


「違うよ」


蓮が鋭く、
ふみのを見る。


「え…?」

「違う。ふみのは、逃げてなんかいない!!」


蓮は声を張り上げる。
その瞳は揺るがない。

「ふみのはちゃんと過去を受け止めて
 前を見て、こんなにも、強く生きてる!!
 逃げてたら、鬼殺隊になんかにもいないし、
 今、此処にもいないよ!!
 ふみのは、今を、一生懸命に生きてる。
 現実からも、自分からも目を背けずに、
 ちゃんと向き合ってるんだよ!!!」


蓮の言葉が
ふみのの心に、
染み渡っていく。


気付くと、
ふみのの瞳から涙が零れ落ちていた。


「…うんっ、…うん。ありがとう。蓮」


今まで此処に来ることを
避けてきたのではないかと思っていた。

起きたことが現実だったと
思い知らされるのが怖くて。

信じたくなくて。

自分を誤魔化そうと
していたのではないかと。

心の底で、ずっと思い込んでいた。


ふみのの心に
やわらかい風が
そっと吹いてくるようだった。


蓮は再び、
ふみのの手を強く握る。

ふみのも蓮の手を
しっかりと、握り返した。


(とうさま、かあさま、よしの、健一郎。
 来るのが遅くなって、ごめんなさい。
 たくさんの楽しい時間を、ありがとう。
 私、頑張るね。強く、生きていくね)
 

「蓮、もう少しこの辺を見て回ろう。
 何か、手がかりが見つかるかも」

「うん!!」


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