火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第11章 煉獄家への継子
ふみのは、自分のことばかり
心配してくれている杏寿郎に
申し訳なさで心苦しくなる。
結局、杏寿郎へ何もできていないのではないかと
ふみのは悲しくなってきた。
「…ふみの?
俺は大丈夫だ。
頼むから、そんな顔をしないでくれ」
杏寿郎は眉尻を下げて、
ふみのを見る。
「…杏寿郎。…痛かったでしょう?」
「痛くないと言えば嘘だな。
でもこの位、何ともない!」
溌剌と答える杏寿郎に
ふみのは、そっと笑みが溢れる。
「杏寿郎は、本当に強いわね…!」
杏寿郎が自分のことでふみのに
心配をさせまいとする気遣いに、
胸が熱くなった。
「ふみの…、
…痛かっただろう?」
「え…?」
杏寿郎に、優しく見つめられる。
そんな彼の瞳を見ていると、
甘えてしまいたくなる。
杏寿郎の手がふみのの頭へと
そっと伸びてきて
よしよしと撫でてくれた。
「………うん…、痛かった…っ」
ふみのは
幼い子どものように目を潤ませて
俯きながらぽつりと呟く。
杏寿郎はふみのの頭を撫でていた手を
ふみのの頬へと伝う。
杏寿郎はうんとやさしい眼差しで
ふみのを見つめる。
「休んだら、きっと良くなる。
…長居してすまなかった。
明日また迎えに来る。
一緒に、家に帰ろう」
「うん…っ!
来てくれて、本当にありがとう」
杏寿郎はそっと笑みを落とすと
ふみのの頬に添えた手を
名残惜しそうに、ゆっくりと離した。
ふみのは杏寿郎の姿を
寝台から見送り、
気付くと深い眠りに落ちていった。
「煉獄さんっ!!」
杏寿郎が蝶屋敷を出ようとすると
洗濯物を取り込んでいたアオイが
怖い顔して近づいてきた。
「神崎少女!!久しいな!」
「もう!!廊下を走って!!
誰かとぶつかったら、
どうするおつもりですかっ!?」
杏寿郎はアオイに捕まり、
こっ酷く叱られてしまった。
そしてこちらでも。
「杲!君ハ、イツモ伝エル内容ガ
大袈裟過ギルッ!!」
「……ウゥ…ダッテ、
ふみのガ心配デ…」
しょんぼりする杲。
杲は要に注意を受け、
もう少し冷静になろうと
心に決めたのであった。