火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第10章 訪問者と贈り物
ふみのが煉獄家に来てから
沢山の月日が流れていたことに
二人は気付かされた。
そして、
お互いを想い合う気持ちは
こんなにも強くなっていた。
ふみのは鏡越しに映った
杏寿郎の肩の辺りに手を伸ばした。
鏡のひやりとした冷たさが
ふみのの指先に伝わってくる。
杏寿郎はそのふみのの手の上から
自分の手を被せる。
「ふふ、杏寿郎の手は、
いつも、あたたかいね」
「そうか?」
「うん、優しいお日様みたい」
二人は、静かに、そっと笑みを落とす。
「ふみのの手は、細くて綺麗だ。
…こんなにも、強くなったのだな」
「ううん、まだまだ、全然。
今日だって、何もできなかった。
…鬼殺隊に入ったのに、何もできていないの。
……すごく、悔しくて」
鏡に触れているふみのの手に、力が入る。
杏寿郎はふみのの強ばった手を
ゆっくり鏡から離し、優しく握りしめた。
ふみのは握られた手を見つめ、
鏡越しからの杏寿郎の熱い視線に、瞳が揺れる。
「ふみの、自分を責めてはならない。
ふみのは隊士になるために
ここまで懸命にやってきた。
これからふみのは、もっと強くなれる。
…ふみのは、一人ではない。
俺がいる。千寿郎も。そして當間少女も。
皆、ふみのの傍にいる。
だから、いつでも頼って欲しい。
…そして必ず、悪しき鬼達のいない世界にできる。
その時まで、共に生き、頑張ろう」
ふみのは杏寿郎の言葉に
目頭が熱くなる。
杏寿郎
どうしていつも、
貴方は私の気持ちを分かってしまうの?
いつも優しく心に入ってきて
私を慰めてくれる
私、
どんどん
杏寿郎のことが
好きになってしまう─────
ふみのは杏寿郎への
止まらない、抑えられない気持ちに
ずきんと胸が痛むのを感じた。
それは杏寿郎も同じだった。
今を、この瞬間も
懸命に生きるふみのが
俺は、どうしようもないくらいに
愛おしいと思う
目の前にいる、ふみのを
今、此処で、
抱きしめられたなら
こんなにも
手が届く距離にいるのに
二人の想い合う気持ちは
儚くも
伝わらない。
届かない。