火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第10章 訪問者と贈り物
「煉獄家がいつも世話になっている呉服屋があってな。
何かふみのに贈りたいと思っていたんだ。
入隊の祝いだ。受け取って欲しい!」
ふみのは羽織を箱から取り出し、
滑らかな手触りに、心をときめかせていた。
「杏寿郎…!こんな素敵な羽織物、
本当にいいの…っ?」
杏寿郎からの贈り物に
ふみのは嬉しさが溢れ出す。
「ああ!ふみのに似合いそうな色を選んだ!
…良ければ、羽織ってみてはくれないか?」
杏寿郎の言葉にふみのは驚くも、
羽織の袖にゆっくりと腕を通した。
「…すごい、ぴったり。本当に綺麗な色…!」
腕を広げて、着ている羽織に視線を向ける。
羽織は着ているのを思わせないような軽さで、
ふみのはうっとりと見つめていた。
杏寿郎はそのふみのの姿を
嬉しそうに見ていた。
「…気に入って貰えただろうか?」
「うん…!とっても…っ!!
杏寿郎、本当にありがとう!
大切に、着るね!」
ふみのは羽織を着たまま
姿見の前で、何度もくるりと回る。
まるで幼子のように燥ぐふみのを
杏寿郎は目を細めて見ていた。
杏寿郎は姿見の前にいるふみのの後ろに立った。
二人の距離が縮まる。
「…杏寿郎?」
真後ろにいる杏寿郎と
鏡越しに視線が重なる。
「…ふみのはどんな色を着ても
きっと映えるだろうな」
「そ、そうかしら…!
杏寿郎も、何を着ても素敵だと思うわっ!」
ふみのの頬が赤く染まり、
艶やかな髪が揺れた。
杏寿郎は目の前で揺れる
ふみのの髪の一束を掬い指を絡める。
杏寿郎の指が背中を掠め
ふみのはの肩を竦めた。
艶やかなふみのの髪は、
杏寿郎の指の合間からするりと滑り落ちた。
「…大分、髪が伸びたな。
結っていたから気付かなかった」
「そうね、長いと束ねるのが楽だから、
しばらくこのまま伸ばそうかな。
…杏寿郎も随分と背が伸びたね」
鏡後しに映る杏寿郎を、ふみのはじっと見つめる。
もうふみのの頭一つ分は優に超えている。
「少し前までは、
ふみのの目線とほぼ同じだったのにな」
「ほんとね!
…杏寿郎と出会ってから、
たくさんの時間が、経っていたのね」
「ああ」