火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第10章 訪問者と贈り物
「あ!そうだ!」
「ん?どうした?」
「食後にね、さつまいもの茶巾しぼりを作ってみたの!
杏寿郎、お腹まだ空いてる?」
「それは!是非とも食べてみたい!」
今持ってくるねとふみのは嬉しそうに、
台所へ向かった。
杏寿郎もまだ食べたことがない菓子の名前に
心躍らせていた。
しばらくしてふみのが部屋に戻ってきた。
「お待たせしました!
初めて作ったんだけど、どうかしら…?」
差し出された平たい器には、黄色く丸みを帯び、
頂の部分がきゅっと絞られた
さつまいもの菓子がのっていた。
「これは!何とも美しい和菓子だな!」
「そんな!和菓子ってほどでもないんだけど…」
いただきます!と杏寿郎は
ぱくりと一口で食べた。
ふみのは杏寿郎の反応が気になり、
じっと見つめてしまう。
「うむ!これはうまいっ!!」
「本当!?よかったわっ!」
杏寿郎のいつもの言葉が聞けて
ふみのは、ほっと胸を撫で下ろした。
「味も優しく、形も良い!
ふみのは本当に料理が上手いな!」
「そうかしら…!
気に入ってもらえてよかったわ!
…選別から帰ってきた後、
看病をしてくれたお礼にと思って作ったの…!」
「俺はふみのに
早く元気になってもらいたかった、ただそれだけだ!」
「…あの時ね、杏寿郎がずっと側にいてくれて、
すごく、嬉しくて…っ。
お迎えに来てくれたのも、とっても嬉しかったの」
ふみのは、
恥ずかしそうに頬を赤らめた。
それを見て杏寿郎も、自然と笑みが溢れる。
「あの朝、杲が飛んできた時、
本当に、嬉しくてな…。
ふみのに少しでも早く会いたくて、
…気付いたら、駆け出していた」
話していくうちに、ふみのと杏寿郎の心には
二人だけのあたたかい光が灯るようだった。
(杏寿郎も
そう、思ってくれて、いたんだ…っ)
ふみのはあまりの嬉しさに
気持ちが込み上げてくる。
「それと、渡すのが遅れてしまったのだが、
これは俺からの気持ちだ」
杏寿郎は白い大きめの箱を
ふみのに差し出す。
「? なにかしら…?」
ふみのは
ゆっくりと箱の蓋を開ける。
「…!! 杏寿郎、これ…っ!」
そこには、
生成色の羽織が入っていたのだ。