火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第10章 訪問者と贈り物
「でもね、唯一お兄ちゃんがいて!
親がいなくなった後、
親戚に別々に引き取られて、
中々会えなくなっちゃったんだけどね。
…お兄ちゃんとの手紙のやりとりだけが、
あたしの希望だったんだよね」
蓮の、遠くを見る瞳は
切なそうに微笑んでいた。
「お兄ちゃんがいつも手紙に、
“無い物ねだりせず、
今の自分に与えられた幸せを
大切にしよう”って、書いてあってさ。
はじめは意味分っかんなくて、
ちょっと不貞腐れたけど、最近ようやく、
分かってきたんだよね、その意味が」
「…お兄さん、蓮のことが本当に大切で
大好きなことが、伝わってくるわ」
「うん!!
あたしもお兄ちゃんのこと大っ好きでっ!
……だけど、仕事の帰り道、
鬼に殺されちゃった」
ふみのは蓮を見たまま、目を見開た。
「まさかね、お兄ちゃんまでもが
いなくなるなんて思ってもみなかった。
…ほんとびっくり。
もう、誰も、こんな思いして欲しくなくて
鬼殺隊のことを知って、
入隊しようと思ったんだ」
ふみのは蓮の話す言葉一つ一つを
丁寧に、心に落とし込むように聞いていた。
少し二人の間に、しばらく沈黙が流れる。
「…ごめんっ!なんか落ちのない話して!
でもね、ふみのの目を見た時、
すぐ分かった。
ああ、この子、
すっごい大切にされてきた子だって。
あたしが“持ってないもの”を
たくさん知ってるなって。羨ましいなって。
…いい意味でだよっ?
運命とか、そんなのよく分かんないけどさ
あたしはふみのに会えて
本当に良かったなあって、思ったんだよね。
ふみのの見せてくれる
表情とか、言葉とかが
なんか、くすぐったくて、
…すごく、嬉しくてさ」
照れ臭そうに伝えてくれる蓮の姿に、
ふみのはとても愛おしく思った。
「蓮。蓮もきっとご両親にもお兄さんにも
たくさん愛されていたと思う。
…だってこんなにも、私、
あたたかい気持ちになれてるもの」
「ふふ!そんなこと言ってくれたの、
ふみのが初めてだよ!
…なんかしんみりさせちゃって、
ほんとごめーんっ!」
申し訳なさそうに笑う蓮の瞳は
少し潤んでいるようにも見えた。