火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第10章 訪問者と贈り物
その過去の刀とは槇寿郎が
以前話していた隊士のものなのではと
ふみのは思った。
「父は、只管に刀に“希(まれ)”を込めて
研ぎ打ち続ける”と申しておりました。
その後、父は病死してしまい、
その事の詳細を聞けず、
残してくれた書物を見て、
創っておりました」
「希(まれ)を、込めて…」
呪われた呼吸と言われている呼吸とは正反対の
希という言葉の意図にふみのは混乱していた。
「…申し訳ない、前置きが長くなりました。
良かったら刀を握ってくださいまし」
庄衛は木箱から布に包まれた日輪刀を取り出した。
鞘は艶やかな濃紺で、
柄には錫色の柄糸が巻かれていた。
「一ノ宮殿の、日輪刀です。
お受け取り下さい」
手渡され、刀を持つと、ずしりと重かった。
ふみのは刀の柄を持ち、
ゆっくりと鞘から刀を引き抜く。
刀が手に吸い付いてくるような感覚が
じわりと体全体に伝わってくる。
刃紋がきらりと光った。
すると、刃の色が鋼を選んだ時に見えた、
銀鼠色にゆっくりと染まっていく。
「おお、これは…っ!」
庄衛は驚き、日輪刀をまじまじと見つめた。
ふみのもその光景に釘付けになった。
「刀の色が、鋼にあった時の色に変わりました…!」
「父か残してくれた書物にも
光の呼吸の日輪刀は、創られたときの刃の色と
大きく変化することはないが、薄らと銀箔を纏うと
書いてありました」
「ではこれは、光の呼吸に適した日輪刀なのですね!」
杏寿郎が庄衛に食い気味に話しかける。
「はい、恐らくそういうことになりましょう。
この色の刃になるのは、光の呼吸以外では
今まで見たことがありません」
「光の、呼吸…」
ふみのはじっと日輪刀を見つめた。
未だよく知られていない光の呼吸だが、
刀が自分を認めてくれたように感じ、
ふみのは今まで以上に使命感で満ちていた。
「帯金様、本当にありがとうございます。
私は、この日輪刀と共に、鬼を滅して参ります」
ふみのは庄衛に頭を下げる。
「もし何か困ったことがあれば
刀鍛治の里にいらしてください。
いつでも手直し致しますので」
「はい!ありがとうございます!」