火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第9章 新しい出会い
漆黒の毛艶が美しい鴉は
ふみのと蓮のそれぞれの肩に留まった。
「ちなみにお二人の鎹鴉は兄弟です。
ふみのさんの鎹鴉は杲(ひので)、
蓮さんの鎹鴉は月光(つきみつ)です。」
「「 ! 」」
ふみのと蓮は顔を見合わせ、思わず綻ぶ。
「それでは、あちらから刀を造る鋼を選んでください。
鬼を滅殺し、己の身を守る刀の鋼は、
御自身で選ぶのです」
ふみのと蓮は
鋼が置かれた台の前に立った。
ふみのは置かれた五つの鋼から
石の奥の方が銀鼠色(ぎんねずいろ)に
透き通るものに目をつけた。
「…なんか緊張するね。
ふみの、決まった?」
「…うん。決まった。
蓮は決まった?」
「うん。あたしはこれを選びたい」
蓮が選んだのは瑠璃色の小さな破片が
散りばめられたような鋼だった。
「…もしかして、ふみのもこれだっだりする?」
「ううん。私はその左隣の鋼がいいなと思ってる!」
「よかった…!
被ったらどうしようかと焦っちゃったよ!」
「それではお選び頂いた鋼で
日輪刀をお造り致します。
お届けまで、しばしお待ちください」
「これにて最終選別は終了となります。
お気をつけてお帰り下さいませ」
二人の少女は頭を下げると
藤が咲き乱れる庭の奥へと姿を消した。
「ふみのが生きててくれて、
本当に安心した!これからよろしく!!」
「うん!私も蓮の姿を見た時、
ほっとしたもの…!こちらこそ、よろしくね!」
「また会おう!その時まで元気でね!」
「うん!蓮も!」
蓮は颯爽に駆けて行った。
(怪我をしてたのに、元気だなあ…!)
肩に乗っている杲が
チラチラとふみのを見る。
「杲さん、今日からよろしくね」
「先ズハ、帰宅スベシ!
怪我ヲ治スベシ!!」
「そうだね…ありがとう」
杲はそう言うと、空高く羽ばたいていった。
ふみのの背中が、急に痛み出した。
初日に影を操る鬼に蹴り飛ばされたところだった。
(緊張が途切れたからかな…いたた…っ。
いいなあ、飛べたら一っ飛びなのに…)
ふみのは空を見上げ、
杏寿郎と千寿郎の顔を思い出す。
(早く、会いたい…っ!)
ふみのは傷を庇いながら
煉獄家へと戻っていった。