火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第9章 新しい出会い
出会ったこともない鬼に
何故そのようなことを言われるのか
ふみのは理解できなかった。
「わ、私はあなたに出会ったことなんて、
一度もないわ…!」
「あの日、妹が殺された日に
妹の着物に残っていたのと同じ匂いがする。
人間の、匂い」
(…ま、まさか、杏寿郎のこと…!?)
「…お前の家族に俺の妹は殺された。
ならお前も同じように殺してやる。
俺と同じように其奴に思い知らせてやる」
その鬼は俯くと、じわじわと足元から立ち登る
真っ黒な影に包まれ、暗闇に消えていった。
(?! どこ?!どこに消えたの?!)
辺りを見回すが、気配はない。
なのに、威圧はさらに勢いを増して
ふみのの手足に纏わりついてくる。
突然、肩にぶわりと冷気が立ち込める。
「ここだよ、鈍間」
後ろを見る間もなく、
ふみのは背後から鬼に突き飛ばされた。
勢い良く前に転がり、
背中に激痛が押し寄せる。
「……うっ…っ」
ふみのを見て、鬼は冷酷な笑みを見せる。
「俺の妹が苦しんだ以上に、
お前をもっと痛ぶってやるよ」
ふみのは痛みに耐えながら、
立ち上がり、刀を抜く。
「…それが、妹さんの、為なの…!?
そんなあなたの姿を、妹さんは喜ばない…!!」
「お前に何が分かる!!黙れ!!」
鬼は自分から伸びる影を
手で自由自在に操り、
蛇のように地面を這わせる。
ふみのはその動きを辛うじて避けながら
鬼との距離を詰めていく。
「この…っっ!!」
鬼に目掛けて飛び、
刀を鬼の頸へと大きく奮う。
「…だから言ってるだろ、
鈍(のろ)いんだよ、お前」
ふみのが刀を振り下ろそうとした時、
鬼はまた影で身を暗ました。
(また消えた…っ!?)
地面に着地すると、
背後から巨大な黒い影が、凄まじい速さで
ふみのを目掛けて襲いかかってきた。
(!!!!!)
型を出そうと
ふみのは咄嗟に刀を構えた。
その時。
「全集中 水の呼吸 参ノ型 流々舞い!!」
目の前を、美しい水飛沫が
黒い影を掻き切っていく。
「あんた、大丈夫?」
目の間に現れたのは
頂でふみのが見惚れていた
黒髪の少女だった。