火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第2章 一族の破滅
自分の大切な子ども達に
何か起こったらどうしようと。
健蔵が分家とこの話し合いで、頭を抱えている姿を見るたびに
みちは子ども達の未来がどうなるのかと不安が押し寄せた。
それは健蔵も同じだった。
この先を生きていく子ども達のことを考えると
本家に当主は継承していきたい。
しかし分家に長男が生まれた今回は
分家もかなり頑なに意見を曲げない。
昔ように分家が当主になっては
同じ過去を繰り返してしまうのでは。
そのことが脳内を過って仕方ない。
健蔵が生まれるずっと前に
過去に一度だけ分家に当主を継承した時があったが、
杜撰な金銭管理と無茶苦茶な体制より
一族の存続が危ぶまれた。
なんとか一族中で力を合わせ、苦難を乗り越えたが、
それからというもの、
分家への信頼は下がる一方だった。
ふみのはみちに抱きしめられたまま、
少しずつ内容が頭の中で整理されていった。
(私は、どんな選択をしていけば、いいの)
その気持ちがみちに伝わったかのように
みちは優しくふみのに言う。
「ふみの、ふみのはふみのらしく。
今は自分の気持ちに素直に。
周りは気にせず、自分を大切にしてください。
当主のことはとうさま、かあさまも一緒に考えます。」
ふみのはみちの言葉に安堵し、大きく息を吐いた。
その途端に、目からは大粒の涙が溢れる。
「…か、かあさま、私はとても怖いです。
怖くなりました。自分の存在がこんなにも
一族の皆んなの命をも抱えいていると思うと
胸が張り裂けそうな程、苦しい、苦しいです…。
……私は、…どうすれば…っ」
涙が込み上げてきて、上手く話せない。
そんなふみのの背中を、みちはゆっくりさすってくれる。
「ふみの、大丈夫、大丈夫です。
とうさまもかあさまも、
ずっと一緒に傍にいます。
もちろん、よしのも健一郎も。
この先、どんな道に進もうと、
私たち家族はずっと一緒です。
この絆は決して壊れることはありません。
強い絆で結ばれているのです。
さあ、ふみの。
母にとびきりの笑顔を見せてください」
ふみのから顔を離すと、
みちは両手でふみのの頬を包む。