第3章 はじまり
だから家ではひとり暮らしみたいなものだった。学校もちゃんと理解してくれている。
けど、家のことを全部自分でしないといけなかったから友達が遊びに誘ってくれても断ってばかりになり、自然と友達はみんな私から離れて行った。私の事情は分かってくれていたみたいだけど…。これが原因でいじめられなくて良かった。
お父さんがまだ単身赴任する前、お父さんとお母さんが話しているのを偶然聞いてしまった。
「るるは手のかからない子だから助かる。」
お父さんとお母さんは2人して私のことをこう思ってる。…もし私が手のかかる面倒な子だったら、お母さんはニューヨークになんか行かなかったのかな。お父さんも東京になんか行かなかったのかな。そう思ってしまう。
テストで満点を取って両親に見せようとすると、「あとでね。」と言われ結局見てもらえなかった。
2人とも自分の仕事が好きすぎるから私のことなんか頭にないと、言われなくても分かっていた。
ある日、学校から帰って来ると机の上にお金が置いてあった。これで夜ご飯を買いなさいという意味らしかった。いつの間にか金額が多い日は次の日の分も買いなさいというローカルルールまで決まっていた。
別の日、明らかに多い…いや、多すぎる金額が机の上に置いてあった。置き手紙も添えて。
この日から2人とも自分の仕事の忙しさに拍車がかかり、帰って来なくなった。