第7章 不可能
「…どこ?」
「牛丼買いにいこ!」
「…ん。」
「…」(毎回お金出してくれるけど…どこから湧いてるんだろ…そのお金…。)
「牛丼4つ。」
「か、かしこまりました…!」
だいたい、コウちゃんのことを知らない店員さんでも、腕に入った刺青を見て戸惑う。
「お会計が1740円でございます。」
「ん。」
「い、1万円お預かりいたします。8260円のお返しになります…!しょ、少々お待ちください…!」
「……なんで4つ?そんなにお腹減った?」
「いや、イチとシュウの分。」
「あ~、なるほど。」
「…菜月。」
「…?」
「…ん、やる。」
コウちゃんが付けていた指輪を取って渡してきた。
「え…?」
それは何の模様も入っていない指輪だった。
「…」
「あ…ありがとう…。」
受け取って右手の薬指にはめた。
「…ぶかぶか…。」
「…それ、外すなよ?」
「…?…わかった…。」
*
袋を両手に持ち、コウちゃんは家に向かって歩いて行った。
「コウちゃん。」
「…」
「好きな人できた。」
「殺すぞ。」
「!…ふふっ…。」
急に出てきた暴言に笑ってしまった。