第7章 不可能
太ももに刺さった刃物を抜き、今度は掌に刺した。
「あぁあぁっ!!!」
掌も熱を帯び、力が抜けた。涙が止まらない。
「…ふーっ…。」
彼は煙を吐き、もう1度刃物を抜いた。
「っ…!」
少し動くだけでも激痛が走る。
「ごめ…っ…なさぃ…ごめん…なさぃ…っ…!」
何度も何度も謝った。油断していた。彼は私に危害を加えないと思っていたから…。
「…」
それでも彼は刃物で刺すのをやめなかった。太もも…掌…背中……。死んでしまいそうなのに死ねない……。
「っ…。」
意識が朦朧とする中、座ったまま意識を手放した。
*
「…っ…。」
ゆっくりと瞼を上げた。ベッドに横になっていて、刺された箇所には包帯が巻かれていた。
「…」(生き…てる…?)
ただ、少しでも手を動かせば痛みが走った。部屋には誰もおらず、血液が染み込んでいたシーツも綺麗に取り換えられていた。
「…」
改めて……彼がヤバい存在だということを身をもって実感した。あれだけ刺されたらしばらくは動けないだろう…。