第5章 貴方に優しく他人に冷たく…
「っ…。」(で、でも…開けられない…。)
だんだん騒音がストレスになってしまった。
「開けて!紘太に会いたいの!!開けてよ!!」
「っ…。」(うるさい…っ…。)
私はその場にしゃがみ両手で耳を塞いだ。
「っ…。」(紘太さん……。)
すると、騒音が止まった。それと同時に女性の声が明るくなった。
「あっ!紘太ぁ!!どこ行ってたのぉ~?♡」
「!…」(帰って…きた…。)
「…うるせぇ。」
ドアに何かが叩きつけられたような音が鳴った。
「っ…あ…あぁぁ…!!い、痛い…っ…!」
ドア越しに何が起きているかわからなかった。私は耳をふさいだまま立ち上がることができなかった。
5分ほど経過してドアが開いた。
「…菜月?」
しゃがんでいる私を見るなり、彼はすぐに駆け寄ってきてくれた。
「…どうした?」
手に付いている血液。静かになったのは彼女を殺したからだろう。
「うる…さくて……怖かった…だけです……。」
いつの間にか体も震えていた。
「……悪かった…。」
彼は謝り、同じ目線まで下がってくれて私を抱きしめた。